異世界A

□知られざる世界
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しかし、肝心の俺を襲った奴とは何者なんだろう?

「それで、俺を襲った奴の正体は何なんですか?」

「ああ、スミマセン。説明がまだでしたね。奴らは『この世ならざるもの』。昔なら妖怪だとか物の化とか、悪霊とか呼ばれていたかもしれませんが、アタシたちは虚無の『虚』という字を宛てて『ホロウ』と呼んでいます。奴らは普段は成仏できない人の魂魄を喰らって生きていますが、好物は死んだ人間の魂魄よりも、生きた霊力の高い人間の魂魄なんです。」

「それで俺が…?」

「ええ。その傷、消そうとしても消えなかったんじゃないですか? これほど形成外科医療の進んだ現代の技術でも。」

「な…、んで…。」


同じことは砕蜂にも訊かれた。しかし、彼女以外に詳しく話した人は、正直いない。なぜ、浦原さんは何もかも「お見通し」なんだ? この人、いったい何者なんだ?

「アタシもね。実は『この世ならざる者』という意味では似たようなもんなんスよ。ただアタシは奴らを成敗する側。虚(ホロウ)というのは、この世に未練があったりして成仏できなかった魂魄がいつしかああいう化け物のようになってしまうんです。アナタは覚えておられるかは分かりませんが、アナタを襲った奴は身体のどこかに、…おそらく胸に、ぽっかり孔が空いていたはずです。」

「スミマセン。よく覚えていないんです。」

「…まあ、今のところ、アナタはご自分で霊圧を無意識に抑えてているようだから、大丈夫でしょう。でも、もしそんな奴を見かけたら、アタシに知らせてください。ま、霊圧で大体分かりますけどネ。」

そこで一旦、話は終わったかに思えた。浦原さんはお茶を啜りながら、今度は砕蜂に向かって言った。

「ところで、砕蜂さん、あなたも霊力がありますね? しかも、自分で霊圧をコントロールできるくらいに。」

「「え?」」

これは砕蜂自身も意外だったようだ。

「アナタも檜佐木さんと同じっスよ。自覚はしてませんが、自ら霊圧を封じ込んでいるタイプです。」

「でも、私には檜佐木のような経験はないし…。」

「近親者が不審な亡くなり方をされたりはしていませんか?」

「え……。」


たしかに彼女は天涯孤独の身だときいている。しかし「亡くなった」とは聞いているが、浦原さんの言うような「不審な亡くなり方」かどうかは知らない。
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