異世界
□助っ人
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翌朝。二人はともに、寝不足で、いつもより遅めに登校した。ショートHRギリギリに間に合えばよいだろう、という考えが裏目に出た。ばったりと教室の前で鉢合わせになり、かえって気まずいことこの上ない。
「お、おはよう。」
「お、おう。おはよう。あの、昨日は……」
と言いかけたときに、隣のクラスの虎徹勇音が走ってきた。
「おはよう、檜佐木くんっ! ちょうどよかった、砕蜂さんもいたっ! 探してたの。」
虎徹勇音は女子なのに、見上げるように背が高い。実際、檜佐木よりも高かった。
「はじめまして。私、隣の2組の虎徹勇音です。砕蜂さんにお願いがあって……」
その時、ショートHRの始まりを告げる予鈴が鳴ったので、
「あ、チャイムが鳴った。次の休み時間にまた来るね。」
とだけ言って教室に戻って行った。とりあえず、次の休み時間は何とか間が持ちそうだ。
そして1限目が終わると、虎徹があらためて訪ねてきた。虎徹はその長身を見込まれて、女子バスケ部の主将をしていた。だが、男子バスケ部と違って、女子バスケ部は部員がなかなか集まらず、故障者が出るとたちまち試合にも困るという有様であった。
「……というわけで、今週末の試合、砕蜂さんに助っ人をお願いできないかなぁ、と思って…。」
「おい、虎徹、お前まだ引退してなかったのか?」
「したわよ。でも、今年は新入生が全然入らなくて、妹の清音から『今度の試合、姉さんも出て』って頼まれてたの。でも、そんな時にもう1人、2年生の子が怪我しちゃって…。」
「で、なぜまた私なのだ? 私は背が低いのでバスケットボールには向かないと思うのだが…。」
「だって、体育の授業のとき、砕蜂さん凄いんだもん。何でもできちゃうし。お願いっ。このお礼は必ずするから。」
体育の授業は2クラスが男子・女子に分かれてそれぞれ合同で行われるので、檜佐木・砕蜂のいる1組と虎徹のいる2組は、各クラスの男子・女子が同じ体育の授業を受けることになるのだ。
「いや…、礼など要らぬが、そもそもバスケットボールはルールをよく知らないので、まずはルールや基本を教えてくれ。」
「じゃあ早速、次の休み時間からでいい? 檜佐木くんも協力してくれる?」
−−虎徹のおかげで助かったんだか、助かってないんだか。