異世界
□挨拶?
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翌朝。砕蜂は登校すると早速、
「お…、おはよう。」
と言った。そして、通路を挟んだ隣の奴、伊勢七緒にも、
「あ…、おはよう?」
とおずおずと言った。
(なぜに疑問符が付く?)
伊勢は一瞬びっくりしたようだが、
「砕蜂さんから声かけてくれるの、はじめてね。学校、やっと慣れてきた?」
「あ、ああ。」
彼女でよかった。伊勢は真面目で成績優秀、そして、何事もそつなくこなす。
「あの、よかったら、予備校の宿題でわからないところがあって、教えてもらえないかな。砕蜂さんならきっと解けると思うの。」
そう言うと、問題集を取り出した。
(伊勢、グッジョブ! 砕蜂の入りやすい話題を振るあたり、さすがだ。)
「え、えっと。どれだ?」
「私、文系だから、数学は苦手で…。」
「多分、この問題なら解けると思う。」
そう言って、数式をサラサラと書き出し、伊勢に教えてやっていた。
「砕蜂さん、ありがとう。またきいてもいい?」
「ああ。わ、私でよければ…。」
伊勢はいたずらっぽく笑うと、
「今まで時々、檜佐木くんに聞いてたんだけど、檜佐木くん、怖いのよ。」
と、小声で話すが、わざと聴こえるように言っているのは明らかだ。だからこちらも、わざとドスを効かせて、
「伊勢〜。聴こえてるぞ。」
と言ってやる。すると伊勢は、
「ね?」
と笑う。そして、鞄の中から本を取り出すと、
「あ、お礼と言ったら何だけど、これもう読んだ? 今、話題の小説。砕蜂さんも本が好きみたいだから。」
「あ、それちょうど読みたいと思ってたのだ。いいのか?」
「うん。私、ちょうど読み終わったところなの。下巻も読み終わったら回すね。」
「ありがとう。」
今度は、素直に言えたようだ。
それから、ガールズ・トークが始まった。どこの本屋がどのジャンルが充実しているかに始まり、その本屋の近くのショッピングスポットや食べ物屋など。俺は一安心した。