異世界
□帰り道
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夜の公園で一頻り大笑いした後、檜佐木が、
「さ、帰ろうぜ。」
と言った。
「はぁ?」
「お前ん家、どこ? 夜も遅いし送ってく。」
「家にくらい1人で帰れる。子どもでもあるまいに。」
「だーかーら。そういうのがいけねえの。折角なんだから、帰りながらもう少し話ししようぜ。ほら、鞄貸せ。」
「鞄くらい自分で…」
「ほら。」
無理やり奪い取るように、檜佐木が砕蜂の鞄を持った。
「お前さ。まず、もう少し他人と関われ。親切にされたら『ありがとう』。悪りぃと思ったら『ごめんなさい』。朝、誰かに会ったら『おはよう』。帰るときは『お先』でも『じゃあ』だけでもいいから、とにかく自分から挨拶。これだけできたら、友だちなんて自然とできるわ。まあ、何もかも急には無理だと思うけどな。」
だが、意外にも砕蜂にとっては大きな壁であった。
「朝の登校時間など、ほぼ全校生徒がおるではないか。一々言って回っていたら、時間がいくらあっても足りぬぞ?」
檜佐木は軽く眩暈がした。
「お前なぁ。知り合いだけでいいよ。誰が全校生徒に挨拶して回れっつった? まずはクラスの奴ら。席、隣りなのは俺だけじゃねえだろ? 通路はさんで隣りのヤツとか…。」
「う……。」
砕蜂は何やら真剣に考え込んでいるようだ。
――これは前途多難だ。