異世界

□孤独感
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檜佐木があれこれ世話を焼いてくるのが、最初は鬱陶しくて仕方がなかった。私には友だちや仲間など要らない、そう思って生きてきた。

だが、こちらに転校してきて、檜佐木と一緒に過ごすことが多くなってくるうちに、ある種の安心感のようなものを感じるようになった。内容は勉強のことがほとんどだが、こんんに他人と言葉を交わすのは、生まれてはじめてだ。


そんなある日、檜佐木に言われた言葉。

「俺とばっかいると、変な誤解されるぞ?」


そうか。迷惑だな。

檜佐木に人望があることは知っていた。そうでなければ生徒会長などせぬであろう。京楽先生が言っていたように、面倒見もよい。現に、私のような無愛想な者にしつこいほど世話を焼く。その言葉は意外にも、私の心に圧し掛かってきた。

私はいたたまれなくなり、図書室を後にした。ちょうど廊下で、昼一の5時限目の授業の市丸先生とすれ違ったので、思わず、

「気分が悪いので早退します。」

とだけ告げて、そのまま家に帰った。

鞄を放り出し、独りベッドに横になる。ずっとあの言葉が頭の中でぐるぐると回る。

――涙? 私は気がついたら泣いていた。
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