異世界
□二度目の会話
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英文法の松本乱菊先生の渾名は「グラマー松本」。英文法の"grammar"と"glomorous"の"glamor"をかけたものだが、本人も意外とこの渾名が気に入っているらしい。男子に圧倒的な人気がある。
そりゃ、若くて美人でスタイルがいいうえ、あの「神々の谷間」を惜し気もなく見せつけながら授業をするのだから、年頃の男子にとっては当たり前か。
一方、女子にも、何かと相談にのってやったりする面倒見のよい姉御肌なので、人気がある。
授業もよく脱線して、楽しい話(大抵は女子の喜びそうな、洋服や食べ物関係の店情報)をしつつも、なおかつ英文法も分かりやすく教えてくれる。
あの殺伐とした生物の授業の後では、まさに心のオアシスだ。
かく言う俺も松本先生の授業は嫌いではない。(いや、すごく好きだっ!)
松本先生は、生徒を当てる時に教卓に手を付き前のめりになる癖がある。だから、ブラウスの隙間から覗く「神々の谷間」の眺めのよい教卓の前数列の席は「松本ゾーン」と呼ばれ、男子にとって、英文法の時間だけは特等席になる。
松本先生が授業を受け持つクラスでは、公平性を期すために、頻繁に――俺のクラスでは2週間に1回――、席替えが行われる。
転校生の面倒を見るように、と京楽先生が彼女の席を俺の隣にできたのも、この頻繁に行われる席替えのシステムを利用したものだった。