異世界

□プロローグ
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俺は檜佐木修兵。空座第一高等学校の三年生だ。

自分で言うのはなんだが、成績は優秀だ。生徒会長もしている。

だがそれには、ちょっとした訳がある。俺の顔にはひどい傷があって、ガキの頃からしょっちゅう、柄の悪い連中に絡まれてきた。あと、俺には両親がいない天涯孤独の身だ。だから、せめて成績優秀・品行方正でいないと、世間からは色眼鏡で見られる。

お袋は、俺を産んですぐに病気で死んだ。癌だった。俺を産まずに手術をすれば助かったかもしれないのに、俺を産んで、結果、手遅れになったらしい。

親父は、俺のせいでお袋が死んだようなものなのに、決して俺を恨むようなことはなかった。それどころか、お袋が命懸けで産んでくれたんだ、といつも誇らしげに語り、再婚もしなかった。

そんな親父も、俺が中学1年の時に、突然死んだ。交通事故だった。

頼れる親戚もなく、普通なら路頭に迷うところだが、親父が残してくれた家と生命保険、俺のためにかけてくれていた学資保険、それと、――事故は親父が一方的に巻き込まれた事故だったので――、事故を起こした相手からの賠償金等々で、何とか生活はできた。


顔の傷は、実は自分でもよく分からないものに襲われた、としか言いようがない。まだ小さかったので、野犬か何かの野性動物を怪物のように見間違えたのだろう、と周りの大人たちは言った。命が助かり、失明を免れただけでも運が良かったのかもしれない。だが、あれは確かに化け物としか思えなかった。

ただ、それっきり、そんなものと遭遇したことはないので、最近ではやはり、野犬か何かだったのかもしれない、と思うようになってきた。


そしてウチの高校には、なぜか似たような境遇のヤツが多い。特に今年の一年生は。

オレンジ色の髪の毛が目立つ黒崎一護。

とても一年生、いや高校生にも見えない、いかつい外見の茶渡泰虎。南米育ちだそうだ。

そしてやはりオレンジ色の目立つ髪の毛をした井上織姫。

黒崎には家族がいるが、母親を事故で亡くしているらしい。茶渡と井上は、俺と同様、両親ともに他界。高校生で、すでに独り暮らしの身の上だ。


黒崎とは、髪の毛の色のことで上級生に絡まれているところを偶然通りかかり、助けに入ったことから、知り合いになった。もっとも、助けに入る必要もないくらい黒崎は強かったのだが、律儀に礼を言われ、それ以来、校内で会ったら挨拶を交わす程度になった。

そして、何とはなしに、茶渡や井上の境遇についても知るところとなった。

あと、変わったヤツといえば、石田雨竜。一年生で常に首席。家が大病院だから、当然といやあ、当然か。運動神経も抜群で、生徒会にもスカウトしたが、断られた。なぜか、手芸部らしい。

まあ、俺の高校には、他にも個性豊かな連中がてんこ盛りだ。

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