頂き物

□リボン
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「檜佐木に贈り物か?」

「誰もそのような事申し上げてはいないではありませんか!!」

目の前のかつての部下をからかうと真っ赤になって否定する。昔からこういうところは少しも変わっていない。

日頃世話になっている者に礼をしたい、何か贈りたい。と砕蜂より相談を受けた。こんなこと言い出すなら相手は一人しか思い浮かばない。

日頃真面目に彼女への慕情を貫き続けている男を思い浮かべて夜一はからかった。

「いや、しかし他におらんじゃろ」

食って掛かってくるかと思えばうつむいて項垂れてしまった。それが無性に可愛くて漆黒の髪を撫でる。

日頃あの重い肩書を背負っている凛とした娘からは想像できないだろうこのような表情は夜一含めて限られた者しか見たことがないだろう。

あの男はどこまでこの娘の表情を知っているのだろう?自分以外によりどころの無かったこの娘の心を救ってくれたあの男に、夜一も礼をしたい。

「リボンをつけてみたらどうじゃ」

「・・・・は?」

アクセサリーとか、調理器具とか、何か実用的なものを想像していた砕蜂は素っ頓狂な声をあげた。

「お主がリボンをまいて檜佐木のところに行けばそれだけで嬉しいのではないか?」

「おっしゃっている意味が・・私はあのような物は似合いません」

見事に伝わっていなくて苦笑する。まあ、即理解されても困るか・・・。

「儂が用意してやろう」

「へ?リボンですか?しかし私は・・」

?マークが砕蜂の頭を渦巻いている。つい悪戯心が湧いた夜一は止まらなくなる。何としてもこの悪戯・・・もとい贈り物を成功させたい。

「よし!!」

流石瞬神。もの凄い速さで砕蜂に覆いかぶさって動きを封じた。

「・・・・・・えええええ!?夜一様!?」

主の突然の行動に目を白黒させている砕蜂の黄色の帯を瞬時に解く。

「大人しくせんか。儂が準備してやるというに」

「え・・・いや、お待ちください・・・何を!!」

慌てて抵抗するがもともと砕蜂は夜一に逆らえない。気が動転している間に隊長羽織まではぎ取られてしまった。
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