異世界
□帰り道
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「ところで、お前、こんな時間にコンビニで晩飯なんか買って、ちゃんと食ってるのか?」
「私は独り暮らしだ。」
「え? 親父さんの都合でこっちに越してきたって言ってなかったっけ?」
「父は――。死んだ。」
「え?」
「父が死んで、会社の跡目争いに巻き込まれたくなかったので、資産を弁護士に託して、私は横浜を離れた。一応、後見人はいるのだが、一緒には暮らしていない。」
「そうだったのか。さっきと同じことしか言えねえけど、本当にきつかったな…。」
「ところで、檜佐木こそ、なぜこんな時間にコンビニでアルバイトなどしているのだ?」
「あれ? 知らなかった? 俺も両親は他界してて天涯孤独の身なんだ。でも、お前ん家みたいに資産家じゃねえから、自分の小遣いくらいは自分で稼がねえとな。」
砕蜂は黙り込んだ。
「……そうだったのか。私は檜佐木のことを何も知らぬな。」
「そりゃ、友だちになったばっかりじゃ、仕方ねえよ。」
お互いの身の上話の続きをしている間に、閑静な住宅街の中にある、新しく建ったばかりと思われるマンションの前まで来た。