駄文(短)

□69って…。B
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6月9日。今年もまたこの日がやってきた。

「檜佐木副隊長、お誕生日おめでとうございます!」

「あの、こういうの、お好きなんですよね? よろしければ…」

と、そのジャンルのDVDをくれる奴。これは、とりあえずもらっておくか?

……。ちっが〜う!!

中には、

「檜佐木副隊長は、ロックではどんなジャンル、アーティストがお好きですか?」

と話題を振ってくる奴もいる。これなら、以前は話題に乗っていた。しかし、これも今となっては俺にはNGである。

かつて、砕蜂隊長に出逢うずっと前、俺が乱菊さんに憧れていた頃、俺は一心不乱にギターを練習していた時期があった。いつかロックバンドを組み、乱菊さんに披露して気を引こうと野望を抱いていたのだ。

自分で言うのも何だが、大抵のことは努力すれば人並み以上にこなせる自信があった。しかし、得手・不得手は誰にでもあるもので。俺は、音楽についてはまるで才能ゼロだったのだ。真央霊術院に音楽の科目が無くて本当によかった。

さらに悪かったのは、ド下手クソにもかかわらず、自分でそれがわからなかったことだ。道理で誰も、俺とバンドを組んでくれなかった訳だ。誰か止めてくれたらよかったのに、乱菊さんの前でソロでギターを披露した途端、大爆笑され、俺の夢は砕け散り、以来「ロック」「ギター」は俺にとってNGワードとなり、ギターを練習していたこと自体、黒歴史となった。

ただ、ギターはかなり高かったので、捨てるには忍びなく、押し入れの奥に封印してあるのだが。

という訳で、この話題を振ってきた奴には気の毒だが、三白眼でジロリと睨むと、

「ああ? ロック? んなもん聴かねえよ」

とぶっきらぼうに応じることになった。
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