異世界

□気になる
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檜佐木と別れて、部屋に戻る。試験勉強をしなくては。学校の中間試験は多分、大丈夫だろう。問題はむしろ、予備校のほうだ。

できれば、檜佐木と同じクラスになったほうが、何かと安心だ。伊勢は文系なので、理数科目ではそもそも選択が違うだろう。

檜佐木のレベルに着いていけるだろうか?

自分はいつからこんなに頼りなくなったのだろうか。情けない。今までずっと独りでやってきたのに。でも誰かに寄りかかることは、存外、心地がよい。これは「甘え」だと頭では理解しているのだが、一度知ってしまうと、それを切り捨てることが何と難しいことか。

勉強に取りかかるが、なかなか集中できない。そういえば、お腹が空いているような…。まだ少し余っていた弁当の残り物を食べる。

檜佐木は「美味かった」と言ってくれた。世辞だったとしても、嬉しい。誰かに褒められて嬉しいなど、疾うに忘れていた感情だった。

はぁっと溜め息が出た。そこに、メールの着信音。檜佐木からだった。

『弁当、マジで美味かった。また作ってくれ。今日はサンキュ。』

すごく幸せな自分がいる。いったい、どうしたというのだ、私は。
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