図書館

□▽湯治まであと…
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梵天丸様は勉強中ということで、俺は一人で畑仕事をしていた。
そんな時、ふと、ある話が耳に入った。
「あそこの湯治に行けば、どんな病でも治るんだとか……。ま、しょせんは、迷信だろうがな……」
通りすがりの農民たちがそう話していた。

………湯治、か。
汗を拭きながら、考える。
連れて行ってやりたいとは思うが、素直に聞き入れてもらえるとは思わない。
むしろ、行きたくないといわれてしまうのが目に見えている。
「……どう連れ出すのが良いか」



「小十郎ーー」
梵天丸の声が屋敷中に響き渡る。
小十郎は自室にて、読み物をしていた。
「小十郎ーー、今日のオレの任務は終わったぞ!!」
部屋に入ってくるなり、梵天丸はまくし立てるようにしゃべる。
「領主とは何たるか……オレ、父上のこと、少し分かった気がする」
「それは良かったですね、梵天丸様」
日はまだ、正午を少し過ぎたところだった。
小十郎は読んでいた書を置くと、梵天丸に問いかける。
「ところで、梵天丸様、今から何か御用でもおありですか?」
「……?特にはない。しいて言うなら、小十郎と話をするぐらいだな」
「それは良かった。少し、出かけませんか?」
「どこに行くんだ?」
「それは……着くまで秘密、ということでいかがでしょう」
「秘密……面白そうだ!」
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