図書館

□▽その医師、住み込みにつき
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輝宗様から直々に仰せつかった仕事。
『梵天丸様のお抱え医』
まだ若く、経験も浅い俺には、少しどころか、だいぶ気が重くなる話だった。
他の医師からの視線が、常に厳しく感じられるのも、気のせいではないだろう。
『なぜ、この若造が…』
そう思っているのは、他でもない、俺自身もだ。

はぁ……ため息が思わず出てしまう。
まずは、梵天丸様と会うこと、会って話をしてから、今後の同行を考えるとするかな。


「初めまして、片倉小十郎と申します」
梵天丸の部屋で、白衣に身を包んだ小十郎が、診療の道具を脇に控え、頭を下げる。
部屋には、梵天丸と小十郎だけ。
梵天丸はといえば、布団の中で、そっぽを向いていた。

「……梵天丸様、聞いておられますか?」
小十郎が、梵天丸の名前を呼び、再度話し掛ける。
返事はなく、梵天丸はそっぽを向いたまま、体を丸める。
「お寒いのですか?でしたら……」
何かを探しているのか、小十郎は持ってきている道具箱の中を探る。

「……うるさい、出ていけよ」
その音が気に入らなかったのか、はたまた、小十郎自身を気に入らなかったのか、梵天丸は布団に入ったままつぶやく。
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