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□▼内密にお話を……
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他人に聞かせたくない内容で、でも周りに他人がたくさんいたら、どうする?
答えは簡単だ、耳元で囁けばいい。
たとえば、ILove youとか。
というわけで、小十郎とある賭けをした。
なにが『というわけで』だって?
はっ、そんなの俺に聞くな。
知らねぇよ、あれだろあれ、話の流れっつうやつだ。
って、何で独り言言ってんだ、オレ。
あーーでだな、話を戻そう。
小十郎と賭けをした。
賭けの内容は簡単だ、負けた方は、用事がある時は『耳元で囁く』というもの。
もちろん、小十郎がそれに同意するはずもなく、『くだらん』の一言で一刀両断されたわけだが、ある裏技を使えば、呆気なくそれを認めた。
……裏技の内容は言えないぜ。
何といっても、オレしか使えない技だからな。

で、賭けももちろんオレの勝ち。
まぁ、そうなるように始めから仕組んでたんだけどな。


そうして、今。
家臣との集会が、オレの独断により開催されたわけだ。
すべては、小十郎のため………はっ、楽しみだぜ。


「であるから……今は、攻め時であると………」
家臣達が、次の戦について意見を言い合っている。
それを俺は、適当に聞きながら、小十郎に視線をやる。
小十郎はといえば、普段通り、その話し合いに準じていた。
「しかしそれは、少し時期尚早ではないでしょうか」
「片倉殿の意見も的を得ているな。……筆頭、どういたしましょうか?」
「……あー小十郎、ちょっと来い」
「はい」
近くまで寄ってきた小十郎に、オレは囁くように言う。
「今から、例のあれをやってもらうからな」
「………何もこんな、大勢がいるところでなくとも」
「その方が面白いだろ?」
「面白くなどありません。むしろ、不審がられますよ」
「構わねぇよ、どうせこの集会の話は、纏まりゃしねぇだろうしな」
「…………しかし!」
「約束を違える気か?」
「……仕方ありませぬな」
「よし、下がれ」
「はい」

話し合いは再開された。
オレはといえば、いつ小十郎が囁きに来るかということに、内心わくわくていた。
小十郎は、今、何を考えているのか、こちらを向こうともしなかった。
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