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□▼共に生きた日々を、大切なあなたと
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雨が、止まぬ。
視界が悪く、双方の戦力がどれほど残っているのか、味方がどれだけ傷ついているのかすら、見当もつかず。
そんな中、戦は行われていた。

「戦の途中とはいえ、少しでも休まれてください!」
「Shut up!!小十郎、おまえは俺に命令できる立場か!?」
「命令ではありませぬ。これはあなたの、否、伊達軍の士気に、この戦の勝利にすら関わる大切なことです」
戦場に兵士達の怒声と戦いの音が響き渡る中、小十郎は右手で政宗の右腕を掴む。
政宗の右手に握られた刀には、誰のものかもわからない血がこびりついている。
いくら人を切ってきたのか、その刀に輝きはなかった。
「これ以上は、お止めください。我が軍が推すにはあなたの力が、必要なのです。政宗様、今は我慢してください」
それでも尚、戦いに参じようとする政宗に、小十郎はその右手に力を入れる。
「離せ、小十郎」
「離しません………」
話し合いは平行線を辿り、両者とも引こうとはしない。



政宗にも、政宗の言い分がある。
今こうして戦おうというのには、誰のためでもない小十郎や民のため。
伊達の、ひいては奥州筆頭として、引くわけにはいかなかった。

「小十郎、俺について来るんだろ」
「はい、政宗様」
その返事がある限り、どこまでも進んで行けると信じていた。
戦が始まるまでは。


その戦場は、荒れていた。
前夜から降り続く雨の影響か、地面がぬかるみ、馬が先に進むのを拒む。
地に不利なのは相手も同じ、だが、政宗は自信に溢れていた。
こんな所で負けるはずがないと、自らが先行し戦いに参じた。
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