図書館

□▽その医師、住み込みにつき
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「頭痛がするとか、お腹が痛むとか………?」
「……どうせ、あんたもすぐに辞めるんだ。俺に関わらないほうがいいよ」
「それはどういう……」
「これ、見て」
梵天丸は体を起こすと、前髪を掻き上げる。
「……っ!」
「酷いでしょ、これ」
輝宗様から聞いてはいた、梵天丸の顔面に見られる疱瘡について。
不治の病、治ったとしても、瘢痕が残り、その右目は……間違いなく、失明。
激しい苦痛と高熱、それにより、死に至ることさえある。
小十郎は、俯くと、膝に置いた拳を握りしめる。そして、彼にかけるべき言葉を探した。


「………だから、どうした」
「……は?」
「それが、どうした。そんなことで布団から出てこないとは……まったく、輝宗様の子とは思えないな」
その言葉は梵天丸にとって、厳しいものであると承知の上だった。
「………こんなガキが俺の患者とは。輝宗様も何をお考えなのか」
「父上を悪く言うなっ」
「……………では、悪いのはあなた自身か?」
酷なことをしていると、小十郎は自分でも感じていた。
だが、もう後には引かない。
最悪、今日で伊達家との縁も終わりになるだろう。

それでも、別に構わないと思った。
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