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□A darling person \
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「伊月君...あのね、話があるの」

そう言った聖華ちゃん
少し...いや、結構沈んだ顔をしてるあたりあまりいい話ではないと思う
聖華ちゃんにとって...よくない話かな
俺からしたらいい話なんだろうな...
なんとなく予想できるのは聖華ちゃんが分かりやすいからかのか、俺がそれだけ人の顔色を窺えるからなのかはよく分からないけど

「...うん、何?」

できるだけ優しく言った
いつも優しい聖華ちゃんが俺にしてくれたようにしなきゃって思ったから
そんなことをしても俺のしたことはかわらないのに

「...そこの公園行こ...?」

指を指した方を見るとよく俺たち2人が話すときやちょっと遊ぶときに使っていた公園だった

「うん」

短くそう答えてコクンと頷いた俺に聖華ちゃんは微笑んだ
それはとても儚くて今にも壊れてしまいそうな、崩れてしまいそうな笑顔で見るにたえなくて思わず顔を背けた


その時聖華ちゃんが寂しそうにしてたことなんて俺は気づかなかったんだ



公園までは特に会話は無くて、すぐそこなのにとても長く感じた
公園につけば聖華ちゃんはベンチに座り俺はその近くで立って話すのを待っていた
座っちゃいけない気がしたから

「あのね...」

「...」

「別れよう...?伊月君」

「...」

そう言った聖華ちゃんは目を真っ赤にして微笑んでいた
それを見たら返事を返すことすら出来なくてどうしていいか分からなくて
俺が何言っても傷つけるだけなんだって気づいてるから
だから俺は最低限のことしか言わない


「私ね...伊月君に好きな人が居るって聞く前から知ってたの...ずっとずっと好きだった、だからなんとなく分かったのに...伊月君はその好きな人しか見てないでしょう?...それがどれだけ辛いか...分かったんだ」

「...ごめん...」

「謝らないで?私も悪かったんだし...それにね、もっと早くに開放してあげたかったのに出来なくてこちらこそごめんね...」

「...」

そんなこと言われたら何言っていいかわかんないじゃんか
もっと前から別れるとこと考えてたってことだろ?
なんで...俺に言わせなかったんだよ...
聖華ちゃんが別れようって言うんじゃなくて俺に言わせれば...そうすれば君は俺をもっと憎んで...それで俺のことを許さないで居てくれるんじゃないの?

「...聖華ちゃん...なんで分かってたのに俺に言わせようとしなかったの?」

「伊月君は何年たっても言わないんじゃないかな?そんな気がするの...」

「...よく分かってるんだね」

確かに俺は言わないだろうな...なんて納得してみるけど
そこまで俺のこと分かってるのは日向だけだと思ってたな...
なんだかんだ親友ってそゆうとこ分かってくれるし...だから正直意外だったし嬉しかった
今は誰も分かってくれないから
ずっと...離れてたから

「うん...だって伊月君のこと好きだもん」

「ありがとう...」

そう言った聖華ちゃんはさっきまでの微笑み方と違ってすごく綺麗で可愛いとまでおもった
元が可愛いからってのもあるけど...

「伊月君は...私が好きって言っても俺も...とかうん...とかしか返してくれないよね?それは好きな人にとっといてあるの?」

そう言われれば言ったことがない気もする
別にとっといてあるわけじゃないと思う...ただ自然に出てくる言葉が俺も、とかうんとかだったりするんだと思うけど...

「伊月君は言葉を大切にする人だから...」

「...そんなことないよ。」


そう言えば俯く聖華ちゃん
別れようってもう1回言うつもりなんだと思う
俺だって男だし、そんな女の子が辛くなることを何回も言わせるなんてこと出来ない
だから俺が言うんだ...
君にありったけのありがとうとごめんを籠めて

「...別れよう...聖華ちゃん。」

「...うん、今までありがとう...それとごめんね」

「こっちが言いたいよ」

「...ん...じゃぁ...ね伊月君...好きな子と付き合えるといいね!」

「うん...バイバイ」


俺たちは別々の道を歩き出した
好きな子と付き合えるといいね!...か
確かに嬉しいとは思う、でも俺の好きな人は男で...それでいて親友としか思ってないまぁ当たり前といえば当たり前なんだけど
でも少しだけ前に進めた気がするんだ
だから俺は日向にメールすることにしたんだ
多分...聖華ちゃんのおかげかな...
1歩ずつでいいから...進んで行きたいな...



出来ることなら日向の隣で
別れがあるから出会いがあるって言うけどまさしくそうだなぁ
なんて思った俺は嫌いじゃないな...

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