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□A darling person W
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俺が好きなのはアイツだけだった
今まで...これからだってそうだと俺は思ってたんだ
なのに最近俺は...何かあると伊月を思い出すんだ
おかしい...
確かに伊月といるのは楽だった。
俺のことをよく理解して、それでいて的確なアドバイスが出来る
今までだって多分そうゆう奴は居たと思うのに...
そいつは別に浮かんでこない
それなのに、伊月のことが浮かんでくるのは...そう...俺は病気なんだ
そうであってほしい
じゃなきゃ俺は困るんだ
アイツとの『約束』があるから...別に叶える気はないけど...
ただの友達として俺は気になるだけ
そうに決まっている


「日向ー」

「なんだよ?」

「部活どうすんだよ?」

「バスケ部だけど、伊月はどうすんだ?」

そう言うと伊月は悩んだようにうーんと唸っていた
そんなことは俺はどうでもよくて、今は出来れば伊月に近寄ってほしくない
正直そこまで考えている俺に嫌気が差す
だってただの友達にそんなことを言えるだろうか...
好きになったって自覚してるみたいじゃないか、別に俺は好きじゃない。
俺が好きなのはアイツだけだ...
昔も今も...明日からも
ちげぇ!昔だけ!!
今は好きじゃ駄目だし、明日からも駄目だろ!!
心の中で自分にツッコミを入れて気づかずに更に考え事をする

「...おーい...?ひゅーがぁ?」

「...」

「聞いてるー?...だめがねぇー」

「誰がだメガネだこらっ」

その場にあった教科書を手に取って軽く頭を叩く

「いたー...、日向が反応しないから悪いじゃん」

「お前のせいだろうが」


は?と小さく呟いて首を傾げた伊月になんでもないと言う意味を込めて苦笑いを浮かべた
今俺は何を言おうとしたんだろう
お前のせい?俺が話し聞いてなかったくせに
自分でも呆れる


「馬鹿みてぇ...」

「...知ってる」

小さく呟くと返答が返ってきて吃驚だ
じゃなくて...伊月は結局何部はいるんだよ...?
聞いてなかったから分かんねぇし...
もう一回聞くとかしたくねぇ...個人的にだけどよ

「あの...日向君!」

「...ぁ...?」

「あれ...隣のクラスの村松さんじゃない?」

「へー...」

教室のドアから叫んでいる小柄な女の子が俺を呼んでいて
それを聞いた伊月は少し不機嫌そうに言ったけど、別に興味なさそうだ
別にいいんだけどな!
心の中でまたツッコミを入れて相手に近づくと俯いた女の子から手紙を受け取った

「あの...良かったら来て下さい!」

「あぁ...うん」

何が来て下さい?
手紙渡して来て下さいっておかしくねぇか?
あ...嵐のように去ってった...
手紙を読むと綺麗な字で


       日向君へ

   隣のクラスの...村松 聖華です...!
もし暇でしたら、今日の放課後、1年B組まで行くので待っていてくれませんか?
     話たいことがあります...





ふーん...別に興味はねぇ...が話したいことってなんだよ?
まぁ今日放課後居ればいいんだけどな

「日向ー、らぶれたー?...がやぶれたー?」

「だあほ!無理矢理繋げんじゃねぇよ!...別にラブレターではねぇだろうけど...」

「ふーん...あっそー」

「んだよ?」

「べっつにぃ」

あぁ、そうかよ...
別にいいけどな!
はー...放課後になるの...待つか


















「日向...君、居てくれたんだ」

「まぁな...」

「あのね...いきなりで悪いんだけど...えっと...その伊月君と仲良いよね?」

「...まぁ」

「その...私一目惚れして...告白したいの!でも付き合ってくれるとは思えないからお友達から始めたいんだけど...お手紙渡してほしくて...!」

真っ赤な顔して頼む彼女を見てると、あぁ好きなんだなって実感する
俺は俺で...心がギューと鷲掴みされてるみたいに痛くて、どうしようもないのにそれを考えないように必死で断ることを忘れてたみたいだ


「あぁ...」

小さく呟いたはずなのに、それは彼女に届いていたようで俺に手紙を渡してよろしくね!と言って足早に出て行ってしまった
俺はため息をついて自分の席につく

何やってんだろ…
馬鹿みてぇ...
俺は好きじゃねぇよ...なぁそう言ってくれよ俺の心
こんな痛いって思ったのは初めてだと思う
でもこれは友達に彼女が出来るかもしれないっていう不安であって...別に好きじゃねぇよな?
なぁ...じゃぁなんでこんな痛ぇんだよ...
好きじゃねぇ




気になってるだけだ
俺は伊月が気になってる...それだけでいいじゃねぇか

それでこの痛みはなくなればいい

俺はアイツだけ...
伊月は友達でただ気になってるかもしれない...それだけ

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