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□A darling person V
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これは偶然だった
順平は気づいてないみたいで、俺のことを忘れたみたいで、なんだかやるせない気持ちになったんだ
分かってる...7年前の約束なんてもうどうでもいいことぐらい
好きでもない男とあんな約束させられて忘れたくない男なんていないだろうし、俺だってもしそんなこと言われても何万...何億と払われても忘れたい記憶になるだろうし
そのぐらい気持ち悪い記憶のはずだ
俺のことなんて忘れたほうが楽だよ...


たまたまクラスが一緒だった、まさに神様が引き合わせてくれたんじゃないかって思うほど偶然で...喋ることがなく何日かたったある日先生が言ったんだ
「席替えをしてみんなと仲良くなりましょうね」
最初はいい迷惑だ、なんて心の隅で悪態をつく
でも席替えをするとそれはすごく嬉しい席だったからさっきのことなんて忘れて俺はその席を満喫していた
窓側の一番後ろ前には順平、横は女の子だけど、別に気にしない
俺にとってはすごく嬉しい席だから

「名前は?」

「伊月俊だよ、じ...宜しくね」

順平と言いかけたけど気合で引っ込めて言い直す
俺結構てんぱってるな...なんて他人事のように思うけど、本気でヤバい

「あぁ、俺は日向順平な、よろしく」

変わらない、君はずっと君のまま
俺が好きになった君のままなんだね
俺は変わったかな?
変わったよね?だって...いつも一緒に居た君が気づかないんだから
どこが変わった?泣き虫じゃなくなったところ?顔つき?笑い方とか...駄洒落好きになったとことか...たくさんあるかな?
君の心のどこかに俺の姿が残っているなら俺は別にいいんだよ
再会したのにやっぱり忘れられている俺は、昔からの俺じゃなくて...今からの俺を好きになってもらえばいいんだよね?


順平、再会できたね
あのときの約束は結婚するって言ってよね
俺、すごい嬉しかったんだ
諦めるために努力したけど、駄目だったみたい
順平を見たときに確信したんだ
ごめんね...
男が君を好きなんて...
嫌だよね

再会出来たこの日と境に俺は諦めることを誓うよ

その印として俺はこれから君の事を『順平』じゃなくて『日向』って呼ぶから

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