*

□少しずつでいいから
1ページ/1ページ



どうしても俺を見てほしかった

でもね、気づいてしまったんだ
君が見ているのは俺じゃなくて...



いつも元気で、楽しそうで...
君と仲がいい女の子



君を好きでも...俺にはどうすることも出来ないのに












「伊月、相談あるんだけど...さ」

「...相談?いいけど...今日一緒に帰る?」

「あぁ、じゃぁ後でな」


そう言って去っていった日向は部活に集中したように見えた
でもそれは最初だけで、暇があればため息をしていて見てるのも辛くなるぐらい悩んでいて...相談相手に俺を選んでくれたのは嬉しいけど
どうしても嫌な予感しかしない俺は...ずっと部活が終わらなきゃいいのにって願ってる


俺は...日向が好きだ
友達...親友としても好きだけどこれは恋愛感情
男女の恋と同じように好きなんだ...って最近になって気づいた
まぁコガに気づかされたって方が大きいのだけど...
それからよく目で追うようになって、日向の些細な行動が嬉しかったり...苦しかったり


俺がゴチャゴチャと考えてるともう部活が終わっていていたみたいで日向の話を聞きたくない気持ちが一層大きくなった

嫌だ
怖いよ
ねぇ...俺はこれからどうしていけばいいの?


「伊月...帰るか...」

「ん...じゃぁ皆お先に」

「じゃねー!」


手をパタパタと振ってるコガは笑顔で見送り
他の部員達は頭を下げたり、挨拶したりしていて
門を出るまで俺たちは喋らなかった...喋れなかった


「なぁ...俺さ、監督...リコのこと好きなんだよな」

その言葉を聞いた瞬間頭の中が真っ白になった
気づいてた...でもそれは信じたくなかった
ただの考えすぎだって...信じたかった
でもね...日向の言葉で聞いちゃったらそれは本当でしょう?
嘘であってほしかった俺の心には黒い感情が渦巻いてて
今にも泣きそうなのを堪えて無理に笑って安心させよとする自分に嫌気がさす
でも日向に本音なんて言えない
だって...純粋に『女の子』に恋してるんだもん
男の俺が...好きだなんて...死んでも言えないよ


「...そっか...いいんじゃない?監督はさ、ちょっと鈍感な部分とかあるけど、根は優しいし、料理出来ないけど俺らのこと良く分かってくれてるしね、俺は...応援するよ?」

作り笑いをする俺は綺麗に笑えてるかな?
笑顔が苦しそうに歪んでないかな...?
今...こんなにも苦しんでるのに...


君は俺のことなんてどうでもいいだね


知ってたのに
なんとなくだけど...気づいてたのに
どうしてこんなに苦しいの?
嫉妬してる
監督に...俺が監督だったらいいのに...
ねぇ...
貴女は今...誰を好きなの?
日向なの?
もし、そうなら両想いじゃん
俺の入る隙間なんて...0%になっちゃうじゃん
どうか...貴女は好きにならないで
酷いって思うかもしれないけど...俺も苦しいんだ...


せめて
今は...伝えないで
今伝えてしまったら...俺の心は壊れてしまうから


「俺..今から用事あるからさ...ごめん帰るね、また聞くよ」

「あぁ、じゃぁな」

「...うん」


諦めよう
この気持ちと『さよなら』をしよう
もし付き合っても今は祝福出来ないと思うけど...
俺が忘れたときに祝福してあげればいいから
だから...どうか神様


今は待っていただけないですか?



俺がこの心を...日向を忘れてしまうまで

完璧に忘れる自信はないけど、
少しだけ忘れてしまえば
この気持ちが傷つくことはないでしょう?


前を見よう...
『さよなら』をすれば俺は進んで見せるから

少しずつでもいいから...


好きだよ...日向。
さよなら...日向。


愛しい人...さよなら...

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ