short

□忍たまトリップ
3ページ/5ページ






「はぁ…」


今日何度目の溜め息なんだろう。

子供の世話をしながら窓の外に目をやる


遠くからきり丸の声と犬の鳴き声が聞こえる
散歩だったか。


「お前はいいよな。苦労しなくて」



私はおしめを変えた子供の頬をつついた


正直私も世話をしてくれるような親みたいな家政婦みたいなものが欲しい


なんて、何考えてるんだろうな…


「はぁ…(ガッシャーーーン!!)え!?」



子供を背負おうとした瞬間、大きな物音が響いた
音がした方は裏口、

子供を抱えたまま裏口に向かうと、女の人が戸を下敷きにして倒れていた



「だ、大丈夫ですか!?」

「うぅ〜…いった…あ、ごめんなさい!!」


女の人は私と目が合うと慌てて立ち上がって今度は後ろに倒れた


「きゃぁっ!!」

「あー……大丈夫、ですか…?」


まさか二回も言うことになるとは思わず、彼女のドジっぷりに笑いをこらえるのが精一杯だった


私は彼女に手を貸して立ち上がらせた


「あああああの、戸、ごめんなさい!!弁償するので許してください!!」


そう必死で謝る彼女の目は虚空を見つめていた


「あの、私こっちなんですが…」

「はっ!!し、失礼しました!!戸を壊してしまってごめんなさい!!」

「大丈夫ですよ。すぐ直りますし。ところであなたは…?このへんでは見かけない顔ですね」



そう尋ねると彼女は頭を押さえて唸った

「具合が悪いんですか!?あ、上がってください!」

「すみません…初対面なのにこんなに失礼なことしてしまった…」

「さ、上がって」

私は彼女の手を引いて自分の寝室へ連れ込んだ
まだ朝方だから布団が敷きっぱなしで助かった

そこへ彼女を寝かせ、桶に水を汲み、手拭を絞って頭に乗せた
あれ、熱あったかな?

「すみません間違えました。」


慌てて手拭を彼女の額から下ろすと、クスクスと笑われた


「面白いですね。」

「そ、そんなことありません…」



手拭を桶に掛け、再び彼女に目を移す

「眠って大丈夫ですよ。」

「あ、すみません…」


彼女の微睡んだ顔は不謹慎だとは思うが可愛いと思った

暫くすると規則正しい寝息が聞こえてきた


この娘さんはいったい誰なんだろうか。
まさか偵察に来た忍者…とか。
戸を壊して私の家に乗り込み、調査する。

しかし幾つなんだろうか。見た目は18、9


「どーいせーんせー!赤ちゃんの世話はぁ!?」



まずい、きり丸が帰ってきた

この人のことをどう説明する!?ってなに焦ってんだ私は!!


「先生?」


障子があっさりと開かれ、さっきまで私が世話をしていた子供を抱きかかえたきり丸が顔をのぞかせた


「うわ!!誰そのお姉さん!!先生の彼女!?やっと!?」

「彼女じゃない!!一言多い!!静かにしろ!!」

「先生の方がうるさいよ!」


きり丸はしー、と人差し指を口に当てて小声で言った

確かに大声上げてしまった

彼女を見ると小さく唸っただけで目は覚まさなかった


「ふぅ。」

「先生この人誰?」


きり丸は私の横に座って彼女の顔を覗き込んだ

「さっきうちの裏口の戸を破壊して入ってきた…誰なんだろうな」

「え?わからないのに家に上げたの!?」

「だいぶ衰弱していた。」

「そうは見えないけどー…綺麗な人だね」

「な、!?」


言われて気付く。確かに綺麗だ
その瞬間何故か恥ずかしくなった


「どうすんの?この人…名前は?」

「聞く前に寝てしまった。起きたら訊いてみるか。記憶喪失だったら最悪だな」

「そんなドラマチックなことがあるわけないでしょ?」



そうだよな。自分で言って馬鹿らしく感じた


「きり丸、犬の世話の後はちゃんと体洗ってこい。」

「もう洗ったよ。」

「ならこの人のことちゃんと見ていてくれ。私は今晩の夕飯を買いに行く」

「はーい。あんまり買いすぎないでね。無駄遣いはダメだから!」

「はいはい」


まったくしっかりした子だこと。


私は障子を静かに閉めて家を出た


裏口の戸も直さなくちゃな



.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ