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□忍たまトリップ
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その夜、物音で目が覚めた


戸を開ける音、お母さん?まさか。
お母さんはもういない。じゃあ誰?


「炉威ちゃん?こんばんはー!」



雑渡さんだ!

何故か嬉しくて飛び起きた
そのまま玄関へ向かうと知らない男の人が立っていた


「ああ、君が炉威ちゃん?寝てたのかな?起こしちゃってごめんね」


「あ、の…どなたでしょうか…」




私は一歩後ずさって尋ねた

怖い。


頭からはさっきからこの信号しか伝わってこない



「君の新しいお父さんだよ。」

「おとうさん…!?」

「そう。君の昔のお父さんが亡くなってからお母さんとはなかよくさせてもらってたんだ」


そんな

嘘だ


「お、お母さんはお父さんが好きだからって皆断ってたんじゃ…」

「ううん。僕からのアプローチは受け取ってくれたよ。せっかく氷見が生まれたのに死んじゃうなんてね…」

「ひみ…?」

「僕と君のお母さんの子供。今はもうお母さん居ないから、君が僕のお嫁さんだよ」


いやだいやだいやだ!!

なんで!?お母さん、嘘ついてたの!?

何でこっちに来るの!?来ないで!助けて


「雑ッ…」

「おいで」


目をギュッと瞑った瞬間、体が宙に浮き、男の人の呻き声が聞こえた


「危ない危ない。」

「雑渡さん!!」



私は雑渡さんに抱きかかえられていて、男の人は玄関でうずくまっていた


「テメェ…!!邪魔すんじゃねぇ!!部外者は引っ込んでろ!!」


さっきとは全く違う態度で雑渡さんに罵詈雑言を飛ばす男。


私は怖くて雑渡さんの肩に額をくっつけて耳を塞いだ


「うるさいな、今は夜だ。黙ってくれないかな?」


何かか体にめり込む音と男の人の呻き声が体に伝わる。
きっと雑渡さんが男の人のお腹を蹴ったんだ。


男の人は静かになった


「怖い思いさせちゃってごめんね」

「うっ…ヒック…」


雑渡さんは家から離れた橋の上に私を連れていった

そこで下ろしてもらった


「私っ、お母さんに騙されてたの…?」


ずっと信じていたのに。


「私、大好きだったのに…」



信じる人には裏切りが待ってる

そんなようなことをお父さんに教えてもらった気がする

『でも人を疑ったりしてはいけない。先ずは信じろ』



信じたのに


「うわぁぁぁあん…」


雑渡さんは私を優しく抱きしめて頭を撫でてくれた



「炉威ちゃん、」



雑渡さんは竹筒を私にみせた


「転生酒。君はどうしたい?」



私は頷いた




このままでは人間不信に成りかねない

新しく出会う人を心から信じたい


私の喉を転生酒が滑り落ちる



目がくらむ


「雑、と…さ」

「次の世界でも会える。だから眠って大丈夫だよ」



次の世界?どこなんだろう


どんなところなんだろう


楽しみだな



友達できるかな?





妙な安心感に包まれて私は眠りについた



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