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□僕のために笑ってよ
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さっきからやたらと隣の彼氏がソワソワしている。夏だからだろうか。
ってそんな都合のいい事ではないのが龍太で。

「ね、」
「なに?」
「浦ちゃんに聞いたんだけどさ、来週お祭りがあるんだって!」
「ああ、町内の?」
「そう!行こうよ!」

断る理由も無いし、それよりも好きだから良いよ、と頷いた。すると案の定抱き締められた。

「やっぱ炉威ちっちゃいね」
「龍太がでかいだけ。」
「そんなことないよ。桃の方が身長高いし、兄弟の中で僕と良太郎が一番低いし。」
「それより低い私が居るから大丈夫。」
「あはは、自分で言っちゃってるし」
「否定できないもん。」

そう言って顔を上げると龍太はおでこにキスを落として立ち上がった。

「あーよかった。もし炉威に断られたらほかの子誘おうかと思ってたんだ。」
「なにそれ!浮気じゃん!」
「あは。嘘だよ。浦ちゃんが、断られたらそう言えばOKしてくれるって言ってたから」

またあの人は余計なことを。龍太に悪影響を及ぼすのが彼の生きがいなんだろうか。変なことを教えないで欲しい。こんどイタ電しまくってやろう。
(↑実際やったら勘違いされたのでもうやらないと決めた。)

龍太と一緒に学校から帰る。龍太は常に軽やかにステップを踏んでいた。その横をぶらぶらと歩く。
町中に来週の祭りのポスターが貼られていた。

「綿飴食べたいなー」
「僕もー。炉威奢ってよ」
「そこは彼氏が奢るべきでしょ」
「冗談だって。お祭りは、炉威お好きなもの何でも買ってあげるから」
「やったー!」

万歳をしてぴょんぴょん跳ねると、龍太に上げた手を掴まえられて手を繋いだ。
私の歩幅に合わせて歩いてくれる。

「浴衣着て着てよ」
「いいよ。じゃあ龍太もね」
「うん。絶対カッコイイから、期待してよね」
「自分で言う?」
「うん。だって炉威が僕をカッコイイって言ってくれるなら、それは正解でしょ?」

どこからそんな自信が湧いてくるんだろうか。でも実際本当にカッコイイし、浴衣も似合いそう。一緒に花火とか見たいなー。
色々やりたいことが増えてきちゃうから、取り敢えずお祭りのことだけを考える。

「でも、できれば暗いとこを一緒に歩きたいなー」

ポツリと彼が呟く。
え?と顔を上げると、こっちを見て唇を尖らせていた

「僕だけに、見せればいいからさ。僕以外の人が炉威を見るのが嫌だ。」

そう言ってスネ夫みたいな顔して前を向く。束縛彼氏なセリフだけど、可愛いとしか思えない私は末期なんだろう。

その後公園に行くと、「蝉うるさーい」と言いながら水遊びをし始めた。帰るときは二人ともびしょ濡れだったけど、家に帰る頃には、すっかり乾いていたという…

(夏の気温と束縛君の恐ろしさ)

(そんなに怖くないんだけどね。)

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