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□しあわせにしてあげる
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一緒に歩けば、
兄弟?仲良いね。弟?
と、言われる。

こんな大きな弟が居てたまるか。こんなブレイクダンサーが兄弟でたまるか。

コレは彼氏です。気が付けば恋人同士という関係。登下校も一緒。お弁当食べる時も一緒。何故か席も隣同士。ずっと一緒なわけで。兄弟みたいに仲良くなるのも仕方ないだろう。
でもそんなこと言えばきっと龍太は怒るんだろう。前に一度、弟みたい、と自分から言ったときがある。その時態度が豹変して犯されそうになったのを覚えている。以来弟だなんて言ったことがない。言うどころか、最近大人に成ったとさえも思うようになった。

「ねー炉威。」
「んー?」
「なんでもないよ。」
「なにそれ」

先にお弁当を食べ終わった龍太は、屋上の柵に指を絡めて校庭を見下ろしていた。パックのミルクティーを飲みながら、風に靡く彼の紫のメッシュを見つめる。それから体を捻って校庭を見下ろすと、隆太のお兄さんの桃先輩達がサッカーをしていた。

「あはは、桃下手くそー」

ボールを見事ゴールポストに命中させた桃先輩を笑うと、聞こえたのか先輩はバッと顔を上げて龍太を睨んで叫んだ

「うるせークソガキ!」
「あはは」
「てめーも笑ってんじゃねぇぞ炉威ー!」
「ごめんなさーい」

お弁当箱を鞄にしまうと、どちらともなく出口へ向かった。

「ねぇ炉威、今日授業でさ、友達に絵心がないって言われてさー」
「あー、分かるー」
「ちょっとぉ!なにそれ!僕頑張って描いたんだよー!?」
「ていうか今日美術の授業無かったよ?」
「落書きだよ!ほら」

龍太はポケットから無造作に折りたたまれた紙を私に渡した。広げてみると、女の人…?が左手を上げている絵。

「人間?」
「失礼だなぁ!炉威だよ!ほら、今はまだ買えないけどさ、いつか僕が指輪買ってあげるって。」
「これ指輪?」
「そう」
「じゃあコレ私?」
「文句ある?」

言いたいことはいっぱいあるけど、取り敢えず結婚することになっているんだろうと悟った。
紙はくれるというのでバッグにしまおうと立ち止まると、不意に頬にキスをされた

「僕がしあわせにしてあげるから、炉威は待ってて」


そういう優しさに触れるから、こんなに束縛彼氏で、我侭なのに離れられないんだ。

(多分一種の病気)


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