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□忍たまトリップ
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「炉威店番お願いね。」

「はーい」



今日はお母さんお茶会らしい。
こんな時代にもお茶会なんてあるんだーとか最近になって思うようになった

お母さんは着物に少し大きめの巾着…?を持っていそいそと出ていった

お父さんが死んでからお母さんにプロポーズとやらを仕掛けてくる男の人が増えた
お母さんはお父さんが好きだから、と皆断った。


無理しなくてもいいのに…


そう考えながらお盆を脇に抱えて店に戻ろうとすると、段差でこけた

「いてっ」


きっとお父さんが怒ってるんだ
無理しなくてもいいってなんだコラ、とか言ってそう


私は一人、店内に飾ってあるお父さんの写真に、ですよねー。と呟いた



お母さん大丈夫かな?そそっかしいから心配になっちゃう。



「炉威ちゃんお茶ー」

「あ、はい只今ー!」



常連さんが外から私を呼んだ



こんな幸せは長くは続かなかった






ある日、お母さんが死んだ



私の15の誕生日に車に撥ねられた







「おか、さん……」



もう私には身寄りがいなかった。常連さんは力になれなくてごめんね、と私の方をさすってくれた



「炉威ちゃん」

「っ、雑渡さん…」



眼帯が特徴的な常連さん、雑渡さんは、私の背中を摩りながら優しく問いかけた


「おじさん、良いもの持ってるんだけど欲しい?」

「え…?お菓子ですか…?」



そういうと雑渡さんは違うよ、と笑った


「君の新しい居場所。」

「私の…?雑渡さん、私のお兄ちゃんになるんですか?」

「お兄ちゃんだなんて嬉しいこと言ってくれるねぇ」



だっておじさんには見えない。かっこいいし背も高いしなんかいい匂いする。それに前ストーカーから助けてくれたとき物凄く強かった。

そんな雑渡さんは零さないように杯を持っていた
中には何か入っている


「これはね、転生酒。」

「てんせいしゅ?お酒なんて飲めませんよ、私まだ15…」

「未成年でも飲めるお酒だよ。これを飲めばここから離れるけど君の居場所が見つかる。
飲まなければここに留まることになる。どうする?」



そんなの、ここに居たいに決まってる。ここはお父さんとお母さんの大切な場所…
でも…


好奇心って恐ろしい。


「一晩、考えさせてください…」

「ん。おっけー」




雑渡さんはその中身を今じゃ珍しい竹筒の中に戻した
今でも使ってる人がいるんだ…


本当にどうしよう。ここにいたいけどいたくない。
でも離れてしまえば後戻りは出来ない。




明日の朝考えよう



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