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□あい・どんと・ふぉあげっと・ゆー
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直ぐに気付けば良かった。
俺はいつだって自分勝手だった。
自分勝手に時の運行を守り、自分勝手に周りに迷惑を掛けて…
炉威が消えるだなんて思ってもいなかった
イマジンと人間の狭間に居た炉衣は、誰とも契約せず、気力だけで“今”を生きていたんだってことを。
俺はすっかり忘れていた
「ったくお前、何時になったらまともなコーヒー煎れれるようになるんだよ」
「侑斗はわかってない!コーヒーは味覚、嗅覚で楽しむものなの!」
何時もみたいにくだらないことで口喧嘩していると、炉威の足元に目が行った
砂、みたいなものが蒸発するように、炉威の足から放たれていた
「炉威ッ、お前……」
驚いて顔を見ると、眠そうに微睡んで、フラフラしながらお盆を抱えていた
「侑斗………私、」
「お前何言ってんだ!」
「私は消える。そういう約束っぽいし…」
「け、契約!俺と契約すればお前は消えずにッ!!」
俺は炉威の腕を掴んだ
腕は、砂は、崩れた
「…ッ」
「ちゃんと、デネブの言うこと聞くんだよ。それとコーヒーいい加減飲めるようにならないと、愛理が困るからね。」
「お、俺もその内消え…」
炉威の細くて白い人差し指が、俺の唇に当てられた。
「最後にコーヒー煎れられて、よかったぁ。」
何時もみたいな、ふにゃふにゃした笑顔で炉威はそう言った
「過去が、未来をくれる」
そしてその指の温もりが、さらさらと消えていった。
「………炉威……」
一口だけ飲んだコーヒーの横にはスティックシュガー。
さっきまで入れようとしていたそれをテーブルの端に寄せ、コーヒーを飲んだ
(ほろ苦いって言うんだろうな)
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