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□June
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世の中の人間の大多数は、この季節を「じめじめ」やら「じっとー」やら「ざあざあ」やらと、
肌にまとわりつくような湿気や、厚い雲が延々と泣きじゃくる空の擬音で表すだろう。

今は梅雨の真っ只中。
防音が施されたこの部屋にも、重たい雨の音が響く。

「あ゛ー俺今まで梅雨を誤解してたわー」
「あ?何だ誤解って」
「今まで俺は、梅雨は"しとしと"だと思ってたのよ。
でもさー今日は違ぇじゃん?"どおおおお"じゃん?」
「あーもうやめろ。ただでさえ湿気でうぜぇってのに」
「もう無理だよー部屋ごと乾燥機に回してえよーじめじめだよー」
「だからうるせえっつってんだろおが!」
「何かしゃべってねえとじめったくてしゃあねぇんだよ!」
「てめえがしゃべってっと温度あがんだよ暑苦しい!」
「んだと!」
「…二人でしゃべるから俺はすごく暑苦しい」
「「わ、悪い…」」

一番幼い十四郎に諫められ、銀時と土方は付き合わせていた額を離し、再びソファーに身を沈めた。
湿気にやられた3人は、朝からたいして動くこともなく、ぐだぐだと過ごしている。
この部屋にはもちろんクーラーがついているが、金時から極力禁止されている。
この家には高杉の計らいで、減らしてもらった家賃をなんとか払って住めているだけで、元より金時の稼ぎが多いというわけではない。ちみちみとした節約が必要なのだ。

「もうクーラーつけちまおうぜ」
「確かに、金時さんも致し方ねえとなりゃ」
「ダメ。金時怒るとご飯なくなる」
「「…はい」」

窓を見れば、心なしか先程よりも雨が強くなっている。外で揺れる大きな木は、窓に当たる雨粒でモザイクがかって見える。大した高さはないマンションだが、それでも飲み込まれそうな程に雲が低い。十四郎は外を眺めながら、ここにいない長男のことを心配していた。

「っつーか、兄貴どこいったんだ?こんな雨の日に」
「今日日曜だしな…。金時さん、昼には帰るのか?」
「金時、朝出るときに帰り分からないって」
「あー?昼どうすんだよ」
「…作るしかねえだろ」
「無理だよー。料理なんかしたことねえもん」
「じゃあお前だけなしな。十四郎、作るぞ」
「分かった」
「ああ、もーっ!俺も作るわ!」

料理ほぼ未経験の欠食児童が3人。
長男の不在に、どうやら台所が騒がしくなりそうだ。


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