小話(41〜60)

スパイシーラムネクレイジー
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「だー!もー!葛西、分かったって!!」
「いや分かってねーだろっ!真面目に聞けよ坂本!!」

昼休みの屋上で、正道館ツートップが揉めている。

「なんだアイツら。どした?」
「リンか…。なんか葛西さんが、家の都合でしばらく実家通いしなきゃなんねェらしくてな。
帰るまでの注意事項を、坂本に垂れてんだよ」
「西島…『通う』と『帰る』の使い方間違ってんぞ。逆だろ…」

葛西はほぼ、坂本の独り暮らしアパートに住んでいるから、建前は、だが。

葛西はくどくどと坂本に言い聞かせている。
「いいか?寄り道しない、独りでケンカしない。
んで、家帰ったらカギ掛けて、知らない人が来ても絶対ェ開けんな!」

「ピー」

「笛ラムネで返事すんな、このバカ坂本!特に鬼塚とか川島とか鬼塚とか、来ても絶対上げるな!!」
「バリバリ知り合いですけど。鬼塚二度言ってますけど。葛西、ほれ」

「ピィーッ!!」

葛西は坂本に差し出された笛ラムネを、鬼の形相で鳴らした。


翌朝。

「あのふたり、もう来てんぞ?」
「マジで?早ェな」

登校してきた正道館生たちは、校門から屋上を見上げ、フェンスにもたれるふたりの姿を認めた。
まだ、他に人影は無い。

「学校でしか会えないから…ですかね」
「それが普通なんだがな」
「そう言ってやったらどうだ?」
「冗談じゃねーよ」

校門に溜まり屋上を仰ぐ生徒たち。

まったく、あのふたりは。
バカなのかなぁ。
バカなんだろうな。

何をそんなに惜しむように会っているのだろう。

青空は高く、頭上から高く澄んだ音が風に乗って流れてくる。

「あれ?アイツら二日連続で、おやつ笛ラムネ?」
「いや、あれァ、坂本の歯笛だな」

くすぐったいような抑揚で降り注ぐその音は、光のように明るい。

「…なんつーか…アレだ、葛西さんの家の用事、早く終わるといいな」
「そうっスね…」

でも。

「その前に少しぐらい、刺激が欲しくないスか?」
「お、分かってきたようだな、後輩」
集団の中、西島がニヤリと笑う。

「先輩方のお陰で。」
後輩もニッコリ返す。
「じゃあまず、渋谷と連絡取ります!」
「えーと、それから…」
フットワークも軽く、1・2年生が動き出す。

「週末かかりそうなら、大阪も声掛けてみろ」
完全に面白がって、リンが言った。
「ハイ!」

「あとは…と」
気が付けば、もうすぐ始業だが、彼らはもう知ったこっちゃない。

面白い方に三千点。
更に倍、ドーン!!

そんな彼らも、まさか連絡のついた鬼塚が、話を聞いたその足で、坂本を誘いに来て大騒ぎになるとは、予想していないのだった。


ーーースパイシーラムネクレイジー ーーー



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