小話(21〜40)
□グレーテルがグレました
1ページ/1ページ
皆さん、こんにちは。
次世代の正道館を担う、イケメンヤンキー・牧山です。
今日は、オレの髪型より盛り上がってる正道館のボーイズライフについて語っちゃうぜ!!
ケンカに明け暮れてると思われがちなウチだけど、意外とメルヘンな部分もあるんだぜ?
例えば、
校内に突如現れる、お菓子の道ィ!
…。
…。
意味が分からないよね!
意味が分からないよね!!?
オレも初めて見た時は、目を疑ったからね!?
それは、廊下や校庭に、20cm位の間隔で、チロリチョコやら、うまうま棒やらが点々と置かれて出来る、菓子の一本道のこと。
ある日ある時、突然に。
気持ち悪ィけど気になるから、取りあえず辿ってみると…。
ウチの頭、葛西さんに辿り着きましたァー!
すっげェ不機嫌だぜ!
明らかに、
『テメェかよ』
って視線だぜ!
西島さんやリンさんたち先輩方の溜め息が、教室中に広がる。
片端が葛西さんなら、もう片方は…。
よっしゃ、レッツラゴー!
菓子の道は、大抵、屋上か図書室か保健室の扉の前で途切れている。
そしてその扉の向こうには。
ウチのナンバー2、坂本さんがいましたよ奥さん!
坂本さんも不機嫌そうだけど、声は普通に掛けられる。
「坂本さん、菓子の道、できてるっスよ」
「えー?お前、食っちまえ」
「坂本さんのご指示とあらば!これが今生の別れとなりますが、男・牧山の事をお忘れなく!」
よよ、と泣きマネをしてみせると、坂本さんは堪らず笑い出す。
「しょーがねーなァーもー。牧山、手伝えよ」
「ハイ!喜んで!」
途中で差し入れられるマジックハンドと紙袋を使って、オレたちは駄菓子をせっせと拾い進んでゆく。
「葛西も扉んとこまで来たんなら、謝ってけっつーの」
坂本さんが、くちびるを尖らせて言う。
お菓子の道とは。
葛西さんと坂本さんがケンカした時、にゃー!!ってなって教室を出てった坂本さんを呼び戻すための道。
葛西さんがバラ撒く、自分への誘導道。
拾い食いしようなんて奴は、もちろん『死』だ。
ケンカした時、葛西さんをあまり独りにしたくなくて、だいたい坂本さんの方が、にゃー!!ってなって出ていくんだが、教室の3年の先輩たちにしてみれば、残った葛西さんは、ぶすくれてとてもじゃないが話しかけられる雰囲気じゃないし、勘弁してくれよ!って感じらしい。
それでも皆がいてくれるだけでいんだ、ってアイツ言うんだぜホント甘いよな、とリンさんはボヤいている。
さて、袋いっぱいの駄菓子を抱えて、坂本さんは葛西さんの席へ還ってくる。
で、めでたく仲直りすりゃァいいものを、葛西さんは坂本さんの手首をぎゅっと掴んで、童話の魔女よろしく、
「お、食べ頃」
なんて言うもんだから、机ごと坂本さんに吹っ飛ばされて、第二ラウンドが始まったりする。
それをオレたちは、役目を終えた(?)菓子を食べながら、とばっちりを避けながら、見たりするのさ。
素晴らしい日々だろ!?
以上、イケメンヤンキー・牧山がお送りしました!
またな!!
ーーーグレーテルがグレましたーーー