小話(21〜40)

追跡中!
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HR直後の放課後、3年○組の教室。

教師Aが、顔を覗かせた。
「坂本いるか?」
「眠ぃつって、HRフケて屋上行ったっすよ」
「そうか」
と、屋上に向かう。

それから五分後。
教師Bが、教室に入ってきた。
「葛西いるか?」
「眠ぃつって屋上行った坂本を起こすって、今、出ていきましたよ」
「そうか」
と屋上へ向かう。


教師Aは、屋上に到着した。
「坂本いるか?」
「さっきY工業から呼び出し食らって、校門に行きましたよ」
「(げげっ!)そうか」
と校門に向かう。

それから五分後。
教師Bは、屋上に顔を出した。
「葛西いるか?」
「坂本がY工業から呼び出し食らったって聞いて、すんげェ顔して校門向かいましたよ」
「(げげげっ!)そうか」


教師Aは、校門に到着した。
「さ、坂本いるか?」
「呼び出しかけたY工業の奴潰して、保健室で寝直すっつってましたよ」
「(あちゃァ〜)そうか」
と保健室へ向かう。

五分後、教師Bは、校門に駆け付けた。
「か、葛西いるか?」
「坂本に呼び出しかけて潰されたY工業の奴追いかけて始末した後、坂本起こすって保健室行きましたよ」
「(あっちゃァ〜)そうか」
と保健室に向かう。


教師Aは、保健室に到着した。
「先生、坂本いますかね?」
「さっき寝入りっぱなを葛西に襲われて、バックドロップでしのいで、やっぱ屋上だわって出ていきましたよ」
「(…)そうですか」
と屋上へ向かう。

五分後、教師Bは、保健室に到着した。
「先生、葛西いますかね?」
「寝入りっぱなの坂本を襲おうとしてバックドロップ食らった後、坂本追いかけて屋上行きましたよ」
「(…)そうですか」
と屋上へ向かう。


正道館高校・屋上の扉。

「あれ、A先生、どうしました?葛西いますかね?」
「B先生。僕は坂本に用事があって。葛西いますよ。ふたりでいます」
「あぁ、それは丁度良かっ…」

屋上で教師二人が見たものは。
夕陽の中、フェンスにもたれて座り、大笑いしている葛西と坂本の姿だった。

何がそんなに楽しいのだろう。
どちらかが何かひとこと言うと、それでまた弾かれたように、ふたりで爆笑している。


「…箸が転げても可笑しいのは、女ばかりじゃないんですねェ」
「うーん、僕の用事は後日でいいかな。A先生どうします?」
「僕も今度にしますよ。職員室戻りましょうか」
「そうですね」


それは、とても穏やかな秋の夕暮れ。


ーーー追跡中!ーーー



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