小話(81〜100)
□夢のような午睡
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ぽす、と背中に軽い衝撃を感じて、葛西は目を覚ました。
と言っても、意識はまだ眠りに引っ張られておぼろである。
ってかオレ、寝てたのか、今何時だ、ここは何処だ?
重いまぶたに逆らわず、再びうとうとしながら、葛西は記憶を組み立てる。
ここは坂本のアパートで、夏休みは明日で終わる。
腹這いで雑誌を読みながら、適当に坂本と喋っていた。
そのまま突っ伏して寝てしまったらしい。
で、今は何時だ?
指一本動かすのも億劫で、葛西は薄目で周囲を伺う。
目の前の床に、窓の形をした橙色の光が落ちている。
夕方だ。
三時間以上は寝ていたらしい。
床に密着した腹と腕、雑誌に押し付けていた頬が、じわり汗ばんでいる。
そして背中に心地好い重み。
そうだ、オレを起こしたコレは何だろう?
坂本は?
その時、鼻唄が近付いてきて、再び、ぽす、と葛西の背中に何かが乗せられた。
控え目な柔軟剤の匂いがした。
鼻唄が遠ざかる。
坂本が、取り込んだ洗濯物を、ふざけて葛西の背中に積んでいるらしい。
いや、オレ、多分背中も汗ばんでると思うんだが。
いまいち頭の悪い坂本の行動だが、本人は楽しそうである。
何やってんだか。
ふかふかと洗濯物を積まれながら、葛西は何だか嬉しくなってきた。
そのまま寝た振りをすることにする。
坂本が、オレの背中の洗濯物を枕にして、寝てきてもいい、と思った。
―――夢のような午睡―――