完全妄想小説
□パス
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「先生。」
そこには、僕が最初に待っていた人がいた。
夕焼けで、顔がよく見えない。
少し元気が無そうだった。
僕は最後のコーヒーを飲み干した。
「やぁ。雨宮さん。君の仕業だね。」
「やっぱりバレバレでした?」
「もちろん。」
第一、今日は本当は君がレポートを集めてくるはずだったでしょう。
「先生、ごめんなさい。まさか、あかりが彼と一緒に、」
「ストップ。」
自分が思ったより声が大きかったようで、彼女は少し驚いている。
まぁ、自分でも案外声が通ってしまったので驚いた。
「これ以上、先生を苛めないでください。ちょっと堪えてます。」
おどけてみる。でも、彼女には通用しそうにない。そんなこと分かっていた。
じっと見つめる。
僕には彼女が何を考えているのか分からない。
「私、先生のこと応援してるつもりなんです。迷惑でした?」
僕には、彼女が何を考えているか分からない。
「迷惑でも、きっとまたやってしまうだろうけど。」
「君は、海野さんの友達でしょう?海野さんの恋を応援しようとは思わないの?」
「叶わない恋だから。先生のはきっと、叶わない恋だから。」
「酷いな。はっきりと・・・。」
「違うんです。前にも言ったけど、私もそうだったから。だから先生の気持ちにも気づいた。だから、せめて先生の応援をしたいんです。」
僕に、自分を投影している。
それはまるで、僕のことを分かっているのは自分だと言っているようだ。
「雨宮さん。」
「はい。」
「今度はナイスパスを期待してます。」
「はい。任せてください。」
やっと笑顔になる。
君は何を考えているんだろう。
僕には分からない。