おお振り

□夜道
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(阿部…くん?いや、駄目だよ)

とっさに浮かんだのは阿部の顔だったが、怒られると思うとやはりかけることはできない。しかも、パンクした頭からは1番にかけるべきである両親がデリートされている。

『田島…くんっ!み、道…なく、なっちゃった』

結局は最後に別れた田島に電話した三橋。それにしても道が無くなった、ではただの怪奇現象なのだが。

『三橋ー?何だ迷子なの?今どこらへんかわかんない?』

通じてしまうのが田島様である。
それから田島に何とか目印になりそうなものを伝えた三橋はいったん電話を切り、会話中に言われた「動くな」という指示通りその場で田島を待つことにした。何故か体操座りで。

「こわく、ない。こわいけど、ない」

等と呟きながら怖さを紛らわせるため鼻歌を混じらせ待つこと十数分。

「…みは… み… はし〜」

遠くから三橋を呼ぶ声が聞こえ、暗くて見にくいが人影もうっすらと見えてきた。
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