ギアス

□憎しみを背負い王は逝く
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「スザクさん、私、夢を見ました」


新総督となって間もないナナリーが、ある日ぽつりと話した夢のことを今でも覚えている。


「お兄様が、真っ白な…とっても綺麗なお洋服を着て、こちらに向かって手を振っていらしたんです」

辺りに広がるのは色とりどりの花畑、近くにはさらさらと流れる穏やかな川。
その様子は、まるで話によく聞く「死者の国」のようで。


「お兄様は、生きていますよね?」

「…あぁ。生きているさ、ナナリー」

(ルルーシュを殺すのは、僕だから。だから、それまでは)


この時は、ルルーシュのために涙が出るなんて思ってもみなかった




ーーーー




「いやぁぁぁ!お兄様ー!」

“ゼロ”が翳す剣にその身を貫かれ、無様に転がり落ちた先は愛する妹の前。周りの歓喜とは裏腹に、こだまする絶叫。
かつて憎しみのまま抱いた「自分がルルーシュを殺す」という誓いは、その時とは違った感情で実行された。


それは水面下で、秘密裏に立てられた計画。
全ての憎しみを己が身一つに宿し、その命と共に黄泉へと連れ去って逝くように。

愚かな過去を引き継ぐ現在を壊し、新たな未来を創り、遺した。


憎くて、殺したくて仕方がなかったのに、今では願ってしまう。彼の安らかな刻を。


(ルルーシュ、君はいつか見たナナリーの夢のように、笑顔でいるのかい?)



答える者は、もういない。



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