おお振り

□便利な餌付け
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「三橋」

「はっはい!」

(何でこいつはこう、俺に怯えるんだ。)

阿部は三橋がいつも自分に対して怯えることを面白く感じていなかった。

(怒鳴った後ならわかるんだけど…名前呼んだだけでってのがな)

「あ、阿部く…もがっ!」

何だかイライラしたもんだから、ベンチの上にあった金平糖を一粒、三橋の口に突っ込んでみた。おそらくマネージャーが持ってきたものであろう。

「阿部く、ん、ありがっ…とう!」

(不意打ちだ)

普段自分に対して怯えてる三橋がまるで花が咲いたかのように明るく笑うから。阿部は赤くなった顔を隠すように三橋に背を向けた。

「う、あ、べ…くん?」

後ろから聞こえる、自分の様子を伺う三橋の声はまた少し怯えている。

(あぁそっか。餌付け、って手があったな)

これからは、怒ったあと何か食いモンを与えよう。
そうすれば三橋は自分に笑顔を向けてくれるだろうから。


それ以前に自分が怒らなきゃいい、なんて事実には気づかない阿部でした。

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