エゴ
□壊れた笑顔
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即答。
『右の反対は?』と聞かれて『左』と答える……それよりも、早く。
「宇佐見さん、ですか……」
「当たり前だろ」
心の何処かで、分かっていたんだ。
俺はヒロさんの失恋に付け込んで、便乗しただけだと。
「秋彦を助けて、お前を殺す」
相変わらず、彼の目は本に向いていて。
ああ、俺はやっぱり宇佐見さんには勝てないんだ、と思った。
…いや、彼に張り合おうなどと考えたこと自体が、これ以上ない程に愚かしい行為だっただけの事。
「当然…ですか?」
「当然だろ」
ああ、困ったなぁ
―……それでも、愛しいなぁ
俺、本当にこの人のこと……
好きなんだよなぁ。
「だって、」
本から目を離して、ヒロさんはふっと微笑む。
「そうすれば……お前は永遠に、俺のものになるだろう?」
何処か壊れた彼の笑顔。
それを見て…俺も笑顔を浮かべた。
彼と同じ、壊れた笑顔を。
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おわり。
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