オリジナル

□陛下と愉快な下僕達 〜リクエストの悠愁悠〜
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ぱか、と目の前の瞳が開く。虚ろな黒は、俺をきちんと認識するまでたっぷり数秒消費した。

「お早う、愁」

「………はょ…」

そう言うなり即座に瞼を閉じようとする愁を必死に起こす。うーとかあーとか言って布団に潜り込む姿が可愛らしい。

「ほら、起きろ。朝食も出来てるんだろ?」

「うー…」

「それに、今起こしに行かないと一日中寝てるのがいるだろ」

「……ぅん…」

「だから起きろ」

「うー…」

目は覚めているのに、布団への恋しさが眠気を誘う。それは誰しも有ることだろう。ただ、こいつはそれに忠実すぎるというだけで。

「……おこしてくれたらおきる…」

もぞもぞと布団の中から伸ばされる腕。苦笑いしてそれを掴み引き上げ、そのまま上がってきた体を抱き締める。

「はい、愁、お早う。」

「ん、おはよ」

一度布団から出してしまえば後は容易い。元々起きてるんだしな。

「…さて、可愛い愛娘を起こしに行きますか」

冗談めかして言えば、「それ冗談じゃないから」と笑われる。黙れシスコン。うりうり頬を突っついて反論しといた。

「突っつくな…。ほら、行くよ。可愛い可愛い愛娘なんだろ?」

「すっかり定着したよなー」

「最早妹ですらないっていうね」

「妹の域越えたよな」

廊下を歩きながら談笑する。少し歩いた所で春の部屋に到着した。『春』とだけ書かれたシンプルな木のプレート。コン、と控え目にノックして扉を開ける。

入った途端、まず目に入るのは大きな木製の本棚。書斎があるというのに、気に入った本は全てここに置いてある。次に机。これも木製である程度の大きさ。部屋の隅には申し訳程度のクローゼットとタンスがある。こちらも木製。というかほぼ全部木製。本棚の横にも一つクローゼットがあるが、そっちはコスプrゲホッゴホッガフッ。大きめの窓には薄い色のカーテン。遮光もあるが今は掛けていないようだ。そして何より目立つのが、

キングサイズくらい余裕で凌駕する程に大きいベッド。

「……相変わらず」

「シンプルかつ生活感がベッドからしかしない」

「全然全く女子らしくない部屋だな」

同じく女子である柚や藍の部屋は、少ないとは言え所々ピンクが垣間見える可愛らしいものだ。しかしここにはそれが一切無い。家具木製ばっかだし。モノクロで揃えてるし。「本当は黒の方が好きだけど黒だと暗くなるし」とか言って白6対黒4だけど。何で木製なんだ燃えるだろって言ったら「だって他の冷たいんだもん」とかよく分からんこと言われたけども。

「また本増えてる」

「まじか」

あれだけの大きさの本棚とベッドがあるというのにまだ寂しさを感じてしまう、無駄に馬鹿でかい部屋(皆そうなんだけどね)を見渡して思った。もう少し家具が必要だろうと。本当に必要最低限の物しか無い。愁も同じことを思ったようで、何処に何を置いたらいいか思案していた。

「…といあえず、起こすか」

「そうだね」

起こすためにここに来たというのに、何故か起こさないようこっそりと移動する。ベッドを覗き込めば、真ん中で布団に埋もれて眠る春がいた。

「本当…幸せそうに寝るよなコイツ」

天蓋に護られるようにしてすやすや寝こける彼女。その寝顔は安心しきっていてとても和む。

「春ー起きろー朝だぞー」

ゆさゆさ、布団を引っ張って声を掛ける。

「ふぇ…」

「朝飯、出来てるってよ」

「あさごはん……すぅ」

「寝るなー!」

ゆさゆさゆさゆさゆさゆさ。ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさ。ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさ。ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさ。ゆさゆさゆさゆさゆさゆさそろそろ皆さんゆがゲシュタルト崩壊し始めたかなゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさ。

「に゙ゃ―――!」

「鳴くな!起きろほら!」

もぞもぞ布団の中へと撤退する体を更に揺さぶり続けていたら、奇声を上げて反抗された。

「ふぅぅぅぅうっ!」

「はいはい威嚇しなーい」

「というか威嚇出来るってことは完全に目ぇ覚めてるよね」

枕を抱き締めたままの威嚇。仕方なしに枕ごと引き上げる。

「きゃ――っ♪」

「なんつー楽しげな顔を…」

嬉しそうに笑いながらずるずると引きずられる春。すっかり起きてやがる。

「起きてるなら抵抗すんなよ…」

きゃあきゃあと笑って抱きついてくる春をいい子いい子しながら呟けば、「だってー」と頬を膨らませて反論する彼女。……ああもう可愛いなぁっ!天使!最早天使っ!春マジ天使っ!嫁とか絶対やらんというか寧ろ欲しいです!畜生可愛いぃぃぃぃ!

「……悠…」

先程からぴすぴすと痛い視線はスルーして小さな体を抱き締める。「いたいー」と寝起きでまだ舌っ足らずな声があぁぁあぁぁぁああ!

「悠ずるい!僕も、僕も春ぎゅーってする!」

「悠いたいー」

「畜生可愛いなぁこいつら!」

Hey,come on!春を右腕に移動させて空いた左腕で愁を迎え入れる。ああ至福!まさに両手に花!

そんな感じでぎゅーぎゅーしてたら扉が物凄い轟音を立てて開かれた。

「早よ起きて来んかこのシスコン共!そしてさっさと春寄越せ!私が抱き締める!」

「柚おはよー(○´∀`○)」

「お早う春ー。春はいつも可愛いなぁ」

なでなでなでなでなで。颯爽と入ってきたのは柚だった。シスコン共、と言っておきながらこの溺愛ぶり。こいつも立派なシスコンだな。

「藍と陛下は?」

「食堂。こんなホモップル置いて早く行こうか」

「「ホモップルとは失礼な!」」

「黙れ」

…黙らされました…。


続きます。
もう春のポジションこれでいい。皆の一足早い可愛い可愛い愛娘。溺愛されまくり。
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