オリジナル
□陛下と愉快な下僕達 〜性転換〜
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藍が見たと言う陛下を捜すため、書斎へと向かう三人。無駄にでかくて長い廊下を進み、無駄にでかくて重い扉を開く。相変わらず本タワーだらけの中をひょいひょいと器用に進みある一角に到着、備え付けのテーブルでアフタヌーンティーを楽しむ陛下を発見した。
「陛下ー、なんか柚が話があるそうですよ」
何だかんだ言いつつ、真っ先に陛下の元へと辿り着いた愁が茶菓子をつまむ。
「…ん、美味しい。僕も紅茶貰って良い?」
「ああ。どんながいい」
「やった、陛下が淹れてくれるんだ。このお菓子甘いし、何も入れないでいいや」
「珍しいな」
男二人が茶を飲みのみ談笑している頃ようやく女子二人が到着。こちらはぜぇはぁ肩で息をしていた。
「愁…。何でアンタあの量を軽々と避けられるの…」
「そりゃ毎日来てますから」
意地悪な笑みを浮かべているが、その手はしっかりと柚達に差し伸べられている辺り助ける気はあるようだ。先ずは柚、その次に藍を助け起こした後椅子に座ってティータイム。時々「っはー…温まる…。」とか言ってる。
「で、用って何だ?」
あーん、とこぼさないよう小さく折ったサブレを愁の口に運びながら陛下が問う。大人しくサブレを享受した愁も愁で、もぐもぐもぐもぐ幸せそう。お前は雛鳥か。
「今日の夕食当番、うちと藍に変えてもらいたくって」
「構わないけど…。いきなりどうしたんだ」
「ちょっと、ね」
ちらっちらっと己へ向けられる視線など全然気付かずサブレをかじる愁。口の周りに付いてるぞ。
「あと、少し時間がかかるから今から厨房使いたいんだ」
「そうか。じゃ、俺等もリビング行くか…。ほら、行くぞ愁」
「ん」
紙で口を吹いて、ついでにコートに着いた埃をぽんぽんと叩き立ち上がった愁は、既に本タワーへと向かっている陛下に続いて歩き始めた。そして、そのまま本タワーへと消えていく。
「……置いていかれた?」
「……置いていかれた」
畜生何だよあの二人、紅茶飲んでサブレ食っただけじゃねえか。その前にまたこの本タワー切り抜けないといけないのかよいや本当それ勘弁だわ――置いていかれた約二名は、ただ立ち尽くすしか無かった。
続きます。