オリジナル

□陛下と下僕の謹賀新年
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10分後、屋敷の玄関に集合した3人は見事に完全装備。皆してもっこもっこ。

「動きづらい」

「「だからってウインドブレーカー上下にマフラーだけで済ませるのは俺達が許さない」」

「何だよ!お前等だって最初はそうだったくせに!」

「俺達は寒いから自分で止めただろ?お前、寒いけどこれでいっかなテンションだったろうが!」

「いーじゃん別に!」

「よかねえよ!風邪引いたらどうすんだ!」

「元気に遊びます」

「その時は頼むから大人しく寝てろ…。」

重い溜め息を吐きながら扉を開けたのは、陛下。こちらもまぁもっこもこで。

「おら、行くぞ」

「はーい」

陛下を先頭に、悠、春、和の順で縦一列に並んで歩いていく。たまに後ろ歩きしたり。

てくてく歩くこと15分。神社の鳥居が見えてきた。

「暗っ!てか恐っ!」

「……ここ5年くらい来てないから」

「駄目じゃん!そりゃ寂れもするよ!!」

わーわーぎゃーぎゃー騒ぎながら鳥居を潜り、賽銭箱の前へ。

「お金は?」

「入れたって儲かる奴がいないから入れないでいい」

「あー、うん。了解」

とりあえずお金を入れるふりだけして、二拍手一礼。

「これって正しいの?」

「知らん。多分間違ってるんじゃないかなぁ……」

作者も知りません。カンです。

「……鐘、鳴らし忘れてない?」

「よし、今鳴らすぞ」

手遅れながらも、がらんごろん鐘を鳴らして、

鐘が落ちた。

「「「……落ちたぁぁあぁあ!!」」」

ぎゃぁぁあああ、まさかのハプニングに絶叫する下僕達。一方陛下はと言うと、冷静に鐘を付け直していた。これよく落ちんだよなぁ、と笑いながら。

「ここに来なくなったのも、毎回鳴らす度に鐘が落ちるからなんだよ」

いい加減業者呼んで直してもらうか。あ、でもここまで辿り着けるのか…?

微笑みながら手を動かしている陛下は、目を鐘から逸らさないまま続ける。

「そういえば、お前達が来るまではこんなこと考えたこともなかったし、笑いながら年を越したこともなかった」

不意に、動かし続けていた手を止めて3人の方に向き直る。

「有り難うな」

柔らかい微笑。3人が笑い返したその時、除夜の鐘が鳴り響いた。

「陛下、明けましておめでとー!」

「今年も宜しくお願いします」

「怪我とか無いようにしましょうね」

嬉しそうに飛び付いてきた春を撫で、悠と和を引き寄せる。

「こちらこそ。今年も楽しもうな」

いや、今年だけじゃない。

これからも、ずっと――4人で。



終わり。
ヤバいかなりギリギリだ…!
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