刀語
□皆既
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月が、欠けていく。
皆既
事の起こりは、人鳥。今朝、こんなことを言い出したのだ。
『あ、あのあのあの……皆さん、皆既月食って、知ってます、か?き、今日、あるんです、けど……』
それに、頭領を代表して鳳凰が食いついた。
『ほう…。皆既月食、とは何だ?教えてくれないか』
『きゃはっ!俺達も知らねぇんだよ人鳥、頼むわ』
割り込む蝙蝠。
『なういてっ達、てっ達』
『俺と白鷺はちゃんと知ってる』
『げ、まじ?』
『まじ』
どうやら、3馬鹿は3馬鹿でも本当に馬鹿なのは蝙蝠だけらしい。
『人鳥、私にも教えてもらえませんかねぇ?』
にっこりと笑みを浮かべる喰鮫に、人鳥は溜め息をついてから一言。
『喰鮫さま、貴方には昨夜あれほど教えたでしょう?体で』
『待って人鳥くん。最後の一言はまずい気がするんだ』
『とは言われましても人鳥、最後の方は意識が無かったので覚えてないのですよ。もう一度、じっくりねっとりと教えてもらえませんかねぇ…。体で』
『喰鮫さん、貴方の場合言ってること全部まずいですからね!? それ明らかに誘ってるだけですよね!?』
『えぇ、まあ』
『そこは否定して下さいよぉ――ッッッ!』
顔を真っ赤にして叫ぶ蜜蜂と、既に寝室に向かっている人鳥と喰鮫。まだ朝だというのに、今からやって大丈夫なのか?いや、私だって蜜蜂とやれるものならやりたいが。
『して川獺、皆既月食とは何だ?』
『んだよ、海亀の爺さん。知らねぇのか?』
『うむ』
『あんたにしては珍しいな。俺も知ってるっちゃあ知ってるけど、説明しづれぇし……虫組辺りなら分かりやすく教えてくれるんじゃないのか?蝶々抜きで』
確かに、鴛鴦といちゃついてる真っ最中の蝶々は使い物になりそうにない。
となると、私か蜜蜂か。困った、私は知らないのだが。
『蟷螂、おぬしは知っておるか?』
まぁ、まだ若い蜜蜂より私に聞くのは当然か…。しかし嘘を吐く訳にもいかない。ここは素直に白状するか。
『いや、知らんな。月食と言うくらいだ、月が欠けるのかもしれん』
あくまで推測だが。
『ふむ……蜜蜂、おぬしは?』
『知ってます。蟷螂さんの言う通りですよ。月が欠けて、見えなく……はなりませんが、色が変わって見えるんです』
『ほぅ……。』
『僕も見たことはないので、楽しみです』
今夜が、楽しみになってきたな。
続きます。
狂犬さんと鴛鴦さんと蝶々さんテラ空気ww