エゴ
□Despair
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「なぁ、野分」
「はい。何ですか、ヒロさん」
ヒロさんが珍しく真剣な、そして沈んだ表情で話しかけてくる。
「…お前、俺が居て迷惑じゃないか?」
え……?
「ヒロさんが居て迷惑だなんて、有り得ません!!!!」
ヒロさん、そんな事を考えてしまった原因は何ですか?教えて下さい、例えそれが人であろうとも抹消してやります。
「俺は、お前の事が、その……すき、だ///。でも、俺の事がもし病院にバレたりしたら…!!」
「大丈夫です」
今にも泣きそうな顔をしたヒロさんを安心させるように抱きしめる。
「俺は、ヒロさんがいれば何もいりません。例え、それが何であろうとも」
地位も、尊敬も、何もかも。
「でも……」
泣きそうな顔で、ヒロさんが続ける。
「俺は、お前の迷惑にはなりたくない…」
「ヒロさん……」
何で、こんな事を考えさせてしまったんだろう?ヒロさんが迷惑だなんて、地球が崩壊しても有り得ないのに。
「…もしかして、病院の誰かに何か言われたんですか……!?」
「―……ッ!!」
図星、ですか。
「…スマン、今のは忘れてくれ」
彼はそう言って、自室へ逃げるように駆け込んだ。
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あれから5日。
俺はその日の夜から連勤が入っていて、ヒロさんとは会えていない。
「…ヒロさん、大丈夫かなぁ」
心配だ。
因みに、俺は『まだ』何も言われていない。今日で帰れるし、このまま何も言われなければ良いのだけど。
現実は、厳しい。
「…………野分」
突然、先輩に話し掛けられた。いつもと違う、とても真剣な声で。
「……院長が呼んでる」
それだけで判った。ああ、バレてしまったんだなって。ヒロさんの言っていた事が、不安が、現実になってしまったんだなって。
「分かりました」
部屋を出ていく。入り口に立った先輩とすれ違う。
すれ違いざま、「……済まない」という先輩の声が聞こえた。
続きます。
スランプ…。