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□陛下と愉快な下僕達 〜RPGでもやりますか〜
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朝。そりゃあもう朝。いっそ清々しい程に朝。
日が昇り、鳥が鳴き、モンスターだって起きる、そんな時間。でも、モンスターが起きていようと、
「…いい加減に起きろぉぉぉお!」
「やだよ…ねむい」
丁度良い木陰で絶賛野宿中の、とあるパーティメンバーは起きないのである。
「ああもう起きろ!起きろ!春だって起きてんだから起きろホラ!」
ゆっさゆっさ、寝袋にくるまる仲間を容赦なく揺さぶる和。その腰には年季の入った杖が差してあり、首には小さくも上等なロザリオ。僧侶だ。
「…春が?」
「そう、春が!だから起きろ!」
ジーッ、寝袋のジッパーを無理矢理に開く和、その姿はさながら夜這いのようでスミマセン冗談ですごめんなさい。
「なら起きるか…」
そう呟いてのそのそ起き上がる少年、悠。昨日は遅かったのだろうか、少し隈ができている。
「なら、って…起きてなかったらどうする気だったんだ」
「起こしに行く気だった」
「うん、結局起きるんだな」
手際良く寝袋を畳んで、傍らに置いておいた、戦士の証である鎧やら武器やらを装備。最後に和を一発蹴って「ハイそこおかしいからなって痛い!」「黙れ」微かに煙の昇る方へと歩いて行った。
「お早う」
「ああお早う。随分と遅かったな」
「ああ、今日は陛下が当番ですか」
「まぁな」
煙の原因は陛下だった。どうやら、朝食を作っているようだ。ぐるぐると棒を使って鍋の中身をかき回している。
「それはいいんですが、何でそれ使ってるんです」
「特に理由は無いけど。いいじゃん、和の杖」
「「よくねぇ!」」
長いロッドで鍋のシチューを煮込む陛下、そしてそれにツッコム男子二人。誰かどうにかしてくれ。
暫くそう騒いでいた所に、薪を拾ってきたであろう藍が茂みを割って乱入してきた。大きな帽子にローブ、手元には杖か聖書。完全なる賢者である。因みにここは森の中だ。
「……何やってるの」
「朝ご飯作ってるんだが」
「俺の杖でな!いいから返せ!」
「だが断る!」
必死の要求も虚しく、シチュー作り続行。
「陛下…。駄目でしょう、杖でシチュー作っちゃ」
「藍…!」
「和のなんかで作ったら食中毒が起こりますよ」
「おい待てそこかそこなのか」
全く、使うならこれにして下さい。そう呟いた藍が出したのは金属製の、
「…レイピア?」
「うん、さっきね、ちょっと」
にっこり、後ろを指差し明るく微笑む藍。その先では愁がわたわたと慌てていた。
『よし、これでOK…ってあれ!? 僕のレイピア何処!?』
どうやらさっきのは彼の武器だったらしい。何処?あれないと困るのに!と半泣きで探し回っていた。動きやすいように、と作られた魔法戦士によく見られる防魔素材のコートを翻してあっちこっちそっちどっち。腰の鞘だけが虚しく動きに合わせて揺れている。
「…返してやろうぜ」
ぼそり、見てられないと悠がギブアップ。レイピアを盗った藍も同感だったようで、申し訳なさそうに笑い未だ半泣きの愁の元へと駆けて行った。
「あ、これ僕の…ねぇ藍」
「ごめんごめん、つい☆」
「うん、つい☆じゃないからね」
まったくもう、と呆れながらレイピアを鞘に収める愁。鞘や柄だけではなく、細く長い刀身にも細かい装飾の成されたそれは彼にとても似合っていた。
「まぁ、僕が造ったんだしね」
くすり、相変わらず彼は妖しく笑う。と、ひょっこり現れた茶色。
「愁は本当よく造るよねー」
大きめの三角帽に、ゆったりとしたローブ。魔法使いの柚だ。
「うちと和と藍の杖も、悠のナイフも、陛下の刀も愁が作ってるし。よくもまぁ出来るよ、ああいうのって職業特有の文字とか紋様とか入れないと出来ないんでしょ?特に魔法系は」
「まぁ、春のは流石に無理だけどね」
「あれは…仕方ないでしょ」
「何、呼んだ?」
「「「うぉぉぉわ!?」」」
ごくごく自然に会話に入ってきた少女。長い髪をゆったりと結い、全体的に暗い配色の衣装を纏う盗賊の春である。
「…?どうしたの」
きょとん、首を傾げ目を瞬かせるその姿は悠達曰く「まさに天使」。なら何故その天使を犯罪者にした。「素早さが高いから」と彼等は口を揃える。
「攻撃、避けやすいだろ!」
「それ違くね?」
力説する戦士と、それに冷静なツッコミを入れる盗賊。朝はやっぱりヨーグルトだよね!と魔法使い。それも良いけどちゃんと他の栄養も採れよと陛下。そうそう、ちゃんと栄養採らないと体壊すからと賢者。魔法使いが使えなくなるとか冗談じゃないと僧侶。まぁまぁ皆落ち着いて陛下が作ってくれたシチューでも食べようよと魔法戦士。もぐもぐシチュー美味しいと盗賊。お前いつの間に戻ってきた。そしてヨーグルト美味しいよヨーグルトやっぱりヨーグルトにはジャムだろj(情熱的に)k(考えて)。
ごめんなさい。
そして続きません。