オリジナル
□陛下と愉快な下僕達 1
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――――ここは、よくわからない国のよくわからない場所にある、よくわからない不思議な屋敷。広大な土地と建物のわりに住人はたったの4人だ。屋敷の主と、その下僕達である。
これは、その4人の屋敷の住人が繰り広げる、実に平和で愉快な日常の物語。
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「へぇ――かぁぁぁ――――!」
「叫ぶな耳痛い」
「へぇ――ぇかぁぁぁぁああ――――ッ!!!」
「お前も叫ぶな!」
何やら漫才のようなやり取りをしつつ屋敷内を移動する3人組。この屋敷に仕える(?)下僕3人衆である。
「ったく、何処行ったんだか……」
はぁぁぁ、と大きな溜め息をつく少年。彼の名は、悠(ユウ)。たまに暴走するが、基本的には頼れる性格だ。故に、自然と下僕組のまとめ役となっている。因みに、これは周りに物事を押し付けられやすい悠だからこそのポジション。下僕組は大抵こいつに着いていくので、何かカルガモの親子のように見えるのはご愛嬌。てくてく。因みに春と付き合っゲホッゴホッであり、春には滅法甘い。実はヘタレ。
「俺に聞くな…って、蹴ってくんじゃねえ!」
反論した瞬間、悠に蹴りを食らわされた少し可哀想なこの少年の名は、和(カズ)。よく皆に蹴られたり小突かれたり弄られたり追い掛け回されたりで、恐らくこの物語の中で最も不憫な登場人物だ。まぁ、蹴られるのも追い掛け回されるのも、皆の愛情表現だから大丈夫大丈夫。あとすぐに仕返しして返り討ちに遭うしね。度々ホモ疑惑が流れ、その都度悠に避けられまくっている。怒らせると怖いよ!
「あはははっ!和ざまぁww あ、でも悠も手加減しとけよー」
最後に、けらけらと楽しそうに笑う少女。名を、春(ハル)という。下僕組の中で、一番主に懐いている。主や悠の後にくっついていく末っ子キャラで、よく怪我をするので皆目が離せない。そして公認の腐女子。BL発言とかはしないけど隠さない。無類の本好きであり、暇さえあれば本を読んでいる。甘えたがりで、悠だろうが和だろうが主だろうが甘えるくせに、気がついたらいなくなることが多い。
「……にしても、本当に見つからないなー陛下」
何処だろうね、と言いながら後ろ向きに歩く春を宥めた後、悠が一言。
「春、書斎は探した?」
「読みふけるから探してない」
「探せよ馬鹿!」
和に一喝され、やっぱり駄目だったかと笑いながら書斎へ駆け出す腐女子と、それを追う男子2人。
その頭の中は、主に仕置きされそうになった時どう逃げるかで一杯だった。
続きます。
主は次回出てきます。