小話
□小話2
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沖→神
ほのぼの
げっ、と眉を寄せて俺はとあるコンビニの前で立ち止まった。
だがそれは外側だけで、内心俺はラッキーだと思った。
しかし、相手はそうでないようで、この澄んだ青空のような瞳を細めてあからさまに嫌そうな顔をしていた。
「…何でお前が此処にいるネ」
「それはこっちのセリフでィ。何でテメェが此処にいるんだよ」
「暑くなってきたから、そろそろ冷たいものが恋しくなっただけネ」
あぁそう言えば、コイツは陽に弱いんだっけ。
俺はそれにへぇーと素っ気なく返した。
するとアイツはぎゅっと眉を寄せると、スタスタとコンビニの中へと入っていった。
俺もむしむしとした暑さが嫌でその後に続いた。
「何で付いてくるアルか」
至極不機嫌そうな顔で俺を見上げてくるのに、俺はフッと鼻で笑った。
「俺も冷たいものが欲しくなったんでィ」
「…その態度、ムカつくアル。お前はドライアイスで充分ネ」
「食えねェだろィ」
俺がそうツッコンだのを無視して、アイツはアイスケースに向かって行った。
目的地に到着すると、途端に真面目な顔つきでアイスを選び始めた。
それからあれでもないこれでもないていうようにケースからアイスを出したり入れたりを繰り返していた。
「何してるんでィ。買わないもんをベタベタ触ってんじゃねーよ」
「違うアル。これとこれは銀ちゃんと姉御でこっちは新八の分アル。後は自分のが決まらないだけネ」
そう言って指差したのは、苺ミルクバーとバーゲンダッシュ、バニラソフトクリームだった。
自分の分が決まらないというのに対して、俺は適当にケースを探って一つのアイスを取り出した。
「何でパ●コアルか…」
「お子様にはこれがお似合いだろィ」
「どうせなら、その白いのじゃなくてアイスコーヒー味がいいアル」
「へぃへぃ」
もっと批判されるかと思っての選択だったのだが、思いの外素直にこれに決めたようだった。
「あ、お金足りないアル」
ポケットを探りながらそう呟いたアイツに、俺はため息をついた。
「出せヨ。金」
そう可愛気の欠片もなく言い放つ。
俺はそれにもう一度小さくため息を吐くと、分かったと言ってアイツからアイスを奪ってレジへと持って行った。
それに驚いたのか、アイツは暫くその場で立ち止まった後、トコトコと俺の方へ寄って来た。
「…い、いいアルか…?」
今度は遠慮がちに、視線を下に向けながら小さな声で言った。
こんなこと、好きな奴にしかしねーよ。
とは言わず、俺は黙って会計を済ませるとコンビニから出て今しがた買ったアイスが入った袋を渡した。
「ほらよ」
「お前、自分の分買ってないネ」
「気が変わったんでィ」
アイツは黙って受け取ると、一度俺を見上げてから袋の中を探り自分のアイスを取り出した。
そして二つくっついているそれを半分に割り、俺に差し出してきた。
予想外のことに俺は目を瞬かせる。
「レ、レディが差し出したものなら、何も言わずに素直に受け取るのが侍の役目ネ」
照れているのか何なのか。口を尖らせて俯きながら尻すぼみになっていく言葉に、俺は思わず吹き出しそうになるのを堪えてアイスを受け取った。
すると、アイツはパッと顔を上げて俺を見据えた。
「アイス、ありがとうネ!」
「っ……!」
そう言ってニッと微笑んだアイツに、俺は思わず見惚れてしまった。
不意討ち、反則、俺の頭の中を様々な言葉が飛び交った。
そんなことを知る筈もなく、アイツは袋を持って番傘をさして、もう此方を振り向くことなく走って行く。
でもそれは俺にとって幸運なことだった。
何故なら、今の俺の顔は自分でも驚くぐらいに真っ赤だったからだ。
***
二人が愛しすぎて困る今日この頃です。
沖田くんが心の中で神楽ちゃんをどう呼んでいるのかが分かりません( ̄∇ ̄ ;)
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