小話

□小話1
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白夜叉+志村姉弟
微シリアス












久しぶりの休戦。
それぞれが刀の手入れなどの個人的な用事をしている間、俺は一人近くの村に出掛けた。

まだ天人の手が届いていない賑やかで平和な村。そこかしこで人々の笑顔が溢れていた。

何をするでもなくブラブラと歩いていると、どこからか怒声と悲鳴が聴こえた。そちらに目を向ければ、二人組の男がまだ幼い少年の腕を掴み、何やら叫んでいた。

「オラァ!!テメェ、お侍様にぶつかっといて謝罪の一つもねぇのか!?あぁ!?」

「ごっ…ごめんなさ…っ」

「あぁ!?聞こえねぇんだよ!!」

酒に酔っているのが一目で分かった。腰に差している刀から攘夷志士だろうかと一瞬思うが、直ぐにそれは紛い物だと悟る。この時代、攘夷志士だなんだと言いふらし威張り散らす輩が増えていることは知っていた。自分からすれば、それが本物か偽物かは直ぐに分かる。

「やめてください!!弟はまだ幼いんです!それでも貴方達は侍なのですか!!」

そこに一人の少女が少年を庇うように間に入った。その瞳は男達をキッと睨み付け逸らさない。

「テメェ!誰のお蔭で生きていられてると思ってんだ!?俺達が戦ってるからだろーが!!」

そう言った男に、ざわりと虫酸が走った。
ああいうタチは、戦に出るどころか何処かの田舎からの成り上がり連中か、藩を追い出された雑兵だと相場が決まっている。

「だからと弟に乱暴しないでください!私が代わりに謝りますから、それでお許しください」

「ほう…。だったらさっさと地面に手ぇついて謝れ、よっ!!」

男が少女の腕を掴み、地面に手をつかせた。

「あ、姉上!!」

「っ…アンタら!!こんな小さな子に何させてんだ!!」

「うるせぇ!!ごちゃごちゃぬかしてっと叩き斬るぞ!!」

そう叫んで刀を抜いた男に、止めようとした老女は狼狽えた。

「おらっ!さっさと謝れよ!!」

「…っ!!」


「オイ、テメェら」

瞬間、俺は男達を蹴り飛ばした。男達は吹っ飛ぶと、派手な音をたてて地面に激突した。

「大丈夫か?」

呆けていた姉弟に声を掛ければ、ハッとして力強く頷いた。
俺はそれに笑みを溢すと、その頭を撫でてもう一度男達に目を向けた。
起き上がることができないのか、男達は此方を見て口をパクパクとさせていた。

「テメェらは攘夷志士なんかじゃねェ。立派な外道だよ。最後に言い残すことはあるか?俺が粛清してやるよ」

そう言って刀を抜きながら見下ろせば、男達はサッと顔を青くさせた。


「し、白、夜叉……っ!!」

「知っているのなら話しは早ェ。オラ、言い残すことはあるか?」

俺が刀を振り上げれば、男達は悲鳴を上げて一目散に逃げて行った。
刀を鞘に納めれば、周囲からは歓声が上がった。

「妙!新八!」

すると、人混みを掻き分けて二人の父親らしい男性が駆け寄って来た。

「すまない…っ!!私が二人で行かせたりしなければ…。お前達が襲われているのを見た瞬間、心臓が止まるかと…。二人共、怪我はないか?」

「はい。このお侍様が助けてくれたんです!」

「あぁ…本当にありがとうございました。このご恩は一生忘れません…。ほら、お前達。お礼は言ったのか?」

父親が二人の背を押せば、少女がどこか恥ずかしそうに前に出た。

「わ…私、貴方みないな人が、本物のお侍さんだと思うの。えっと…助けてくださって、ありがとうございました!」

そう頬を染めてはにかんだ少女に、俺は笑みを溢した。

「ほら、新八」

今度は、弟がモジモジとしながら俺を見上げた。

「助けてくれて、ありがとうございました。ぼ、ぼくも、しょうらいはお兄さんみたいなお侍さんになりたいです!」

真っ直ぐな瞳でそう言われ、俺は微かに目を見開いた。そんなことを言われたのは、初めてだったから。

「…ありがとな」

ポンポンと少年の頭を軽く叩けば、その顔には子供らしい屈託のない微笑みが広がった。

「では、私共はこれで。本当に、ありがとうございました」

「さようなら!また、会いましょうね」

「またねー!」

そう言って元気よく手を振る姉弟に、俺もヒラリと手を上げて返した。


「また、な…」






***

うーん。これは小話というのでしょうか?
ちょっと長かったかな…。

とりあえず、思い付いたものを書いてみました!
こんな風に、昔に出逢っていたらいいなという妄想でした(笑)

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