二万打御礼小説

□4.肩にかけられた大きな羽織
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「ねぇ銀さん」

「んー?」

「寒くないんですか?」

夕飯の買い出しに二人でスーパーに行った帰り道。妙は銀時の服装を見て言った。

「いや?今日はこれといって寒い日でもねーだろ」

でも、と妙は再度銀時の服装を見た。
いつもの着流しを半分脱いだ格好にマフラーを巻いているだけという、冬場にしては見ているこちらが寒いような服装。いつも思うが、彼の服装はワンパターンなのだ。

「たまに着ている羽織はどうしたんですか?」

「あー、あれか。二着ぐらいあったんだが…一着はこの前屋台で酔った勢いで熱燗とおでんこぼして、もう一着は定春が遊んで破いた。まぁ銀さん丈夫だから。風邪なんかひかねーよ」

そう言って片手で妙の頬に触れる銀時。その手はヒンヤリと冷たくて、妙は思わず片目を瞑った。

「…いつでしたっけ?銀さんと神楽ちゃんがウィルスで風邪をひいてウチに雪崩れ込んできたのは」

そう言えば、頬に触れていた銀時の手がビクリと揺れた。

「いや…さすがの銀さんもウィルスには勝てなかった…みたいな?」

「もう、銀さんって意外と風邪ひきやすいんですから気を付けてくださいよ」

「わぁーったよ。ほら、帰るぞ。新八と神楽が待ってる」

そう言って差しのべられた手を握り、止めていた足を動かす。最初は冷たかった手が、お互いの体温でじわじわと暖まってくる。吐く息は白くて、耳もじんじんとする。妙は着ていた薄桃色の羽織を先程より少し深く羽織った。その時、ふと思いついた考え。

―着るものがないのなら、作ってしまえばいいんだわ。
















***

「お、もうこんな時間か」

点けていたテレビから時計に目を向けて銀時は言った。時計の針は午後11時を指していた。新八と神楽は一時間ほど前に寝静まり、銀時と妙は二人きりの時間を過ごしていた。

「そういえば、まだお風呂入ってませんでしたよね?銀さん先に入ってきてくださいな」

「いいのか?」

「はい。私は洗い物があるので」

そうか、と言って風呂場に向かった銀さんを見送ると、妙は手早く洗い物を済ませ、押し入れから布と裁縫道具を引っ張り出してきた。目的は、銀時の羽織を作ること。どうせなら秘密で作って本人を驚かせたい。裁縫なら、幼い頃母に教わったおかげで自信があった。
銀時のサイズに合わせて布を切り、頭の中で行程を考えながら作業を進めていく。一人きりの居間は静かで、時計と布の擦れる音だけが耳に入る。
久しぶりにした糸で縫っていくという作業は、思いの外目を使うようだ。そして今の時間帯。瞼がだんだんと重みを帯びてくる。いつもなら、職場の騒がしい雰囲気のおかげでこの時間でも眠くなるということはない。もうそろそろ銀時も風呂から上がってくる頃だろう。

「片付けなきゃ…」

そうは思うのだが、このまま机に突っ伏して瞼を閉じてしまいたいという衝動にも駆られる。

「…少しだけ…」

















***

「妙ー。風呂空いたぞー…って、なんだ寝ちまったのか…」

次に妙の意識が浮上したのは、そんな声が聞こえた時だった。
『寝てしまった!』と思いながらも、なんだか起きるに起きられず、妙は狸寝入りを決め込んだ。

「…んだこりゃ?…布?新八に服でも作ってたのか?」

『貴方のために作ってるんです!』とは言わず、妙は耳だけをすませていた。

「…っと、毛布はー……無ェな…しゃーねェ…」


ふわっ…


肩に感じた少しの重み。気付かれないようにうっすらと瞼を開ければ、視界の端に映ったのは、白。それと同時に、いつも一緒にいて分かる独自のふんわりとした甘い香りが鼻を掠めた。

「…あんまり、無理すんなよ」

そう言って銀時は妙の隣に腰を下ろし、寝転んだ。暫くすると、規則正しい寝息が聞こえてきた。
肩にかけられたのは、銀時がいつも着ている着流しだった。隣にいる銀時の寝息と、彼の香りのする着流しが、まるで彼に抱かれているよう錯覚させて、妙は大きな安心感に包まれた。

「無理なんて、するに決まってるじゃないですか…」

妙は既に夢の中であろう銀時の寝顔を見つめながらそっと呟いた。

貴方がかけてくれた大きな着流しから伝わる優しさ。私も早く羽織を作って、今度は貴方に優しさと温もりをあげたいんですから。







ベタ…ですね( ̄▽ ̄;)
文もグダグダ……すみません。なにぶん久しぶりに書いたものですので…。
そして「羽織」が「着流し」に変わっちゃってました。例の「後から気付く病」が発病したようです…(汗)
ただほのぼのな二人を書きたかった。後悔はしていませんっ!
後日お妙さんは、昼寝している銀さんに完成した羽織をかけてあげます(*^_^*)

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