二万打御礼小説

□1.空気が澄んだ、晴れた朝
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「ん…」

瞼を開ければ、見慣れた天井。ゆっくりと身を起こして欠伸を一つする。
障子からは朝日が射し込み、薄暗い部屋の中を照らしていた。

「朝ご飯、作らなきゃ…」

そう言って妙は立ち上がる。
確か昨日は銀時達と夕御飯を食べて、その後に眠ってしまった神楽と共に銀時も志村邸に泊まることになったのだった。
いつもは弟である新八が朝食を自ら率先して作ってくれているのだが、昨日は久々に体力を使う依頼が入ったのだと言っていたからきっと疲れているだろう。
こういう時ぐらいは自分がと思い、朝特有の肌寒さに身を縮こませながらも肩掛けを羽織り廊下へ出た。
青空に昇った朝日の眩しさに目を細め、足元から伝わる床の冷たさを感じながら歩いていく。
鳥のさえずりだけが聞こえるしんとした静かな朝。
ひんやりとした、でも昼間とはまた違った澄んだ空気を吸い込みながら台所へと向かった。

「あら…?」

ふいに鼻を掠めた匂い。それはご飯が炊けた時や味噌汁を煮ている時に漂ってくるものと似ていた。
もう弟が起きているのだろうか。そう思い、トタトタと足を速める。その匂いは、台所に向かうにつれてだんだんと強くなっていく。やはり、と心の中で呟き、そっと台所を覗いた。

「新ちゃん…?」

予想していた弟の名前を呼んでみるが、そこにいたのは予想外の人物だった。

「あ、起きた?」

おたまで鍋をかき混ぜながら銀時が振り向く。
いつもの着流しの上からは、弟が使っているエプロンを着用していた。

「え、あの…銀さん…?」

見慣れない光景に妙が驚きを隠せないでいると、銀時はクスリと笑った後、鍋の火を切り蓋をした。

「驚いた?」

そう言って悪戯っぽい笑みを浮かべる銀時に、妙は素直に頷く。いつもならまだ布団の中で熟睡している時間帯だというのに。

「これ、全部銀さんが作ったんですか?」

開ければふわりと蒸気が上り白米が姿を現す釜に、ほどよい味噌の香りが漂う鍋。そして皿に乗せられた温かい焼き魚と小皿にそっと盛られているほうれん草のお浸しが四つ机に並べられていた。

「そ。銀さん頑張ったから。やっぱ材料があると違うな。もうウチ(万事屋)は砂糖と塩しかねーもん」

「…それって相当ギリギリの生活してるってことですよね。でもすごいです…。銀さんって料理できたんですね」

妙がそう言えば銀時は、銀さん器用だから。と言ってニッと笑った。

「…それに、給料払えてない分アイツらになんかやってやんねーとって思って…あと、妙にもたまには俺が作ったもんも食ってもらいたかったし…」

尻すぼみになっていく言葉に妙はクスリと笑みをこぼすと、

「給料払えやゴラァ」

と銀時を鬼のような形相で睨み付けた。
「すみません…」と俯く銀時。

「でも…」

そう言った妙に銀時は顔を上げて妙を見た。

「すごく嬉しいです。大好きな人の手料理を食べられるなんて、私は幸せ者ですね」

ふわりと花が綻ぶように微笑んだ妙に、銀時の心臓がドキリと高鳴る。あぁ、自分は相当コイツに惚れているんだなと自嘲の笑みをこぼす。

「俺もだよ。大好きな女に自分の作ったもん食ってもらえるんだからな」

そう言って二人でしばらくクスクスと笑い合った。


「…ところで…」

一通り笑い合ったところで、妙が顔を上げてまな板の隣に置かれた数個の卵を見た。

「何かもう一品作るんですか?」

「ん?あぁ、なんか彩りに卵焼きでも作ろうかと思って」

そう言えば妙は、卵焼き!と目を輝かせた。
銀時の頭に嫌な予感が生まれる。

「なら、私も手伝「いや!いいです!」

言わせるか!と言わんばかりに銀時が言葉を遮る。
何故ですか?と首を傾げる妙に、銀時は必死に言葉を並べる。

「え、いやそれはさぁ…ほら!やっぱここまで作ったんだし最後まで俺が作るから!妙は飯ができるまで茶でも飲んでてくれればいいから!(暗黒物質を作らせてたまるかあぁァァァ!!)」

銀時の(必死の)説得(訴え)に妙は、そうですか?じゃあそうしますね。と湯呑みを取り出しに食器棚へと向かった。
ほっと胸を撫で下ろす銀時。

「あ、いい匂い」

「キャッホウ!おかずがいっぱいアル!!」

そこに新八と神楽が顔を出した。

「おう、お前らも起きたか。今日は銀さんが直々に作った朝飯だぞ」

「え?これ全部銀さんが作ったんですか?」

「すごいアル!!」

「だろ?ほら、さっさと顔洗ってこい」

感心したように並べられた料理を見る新八と目を輝かせている神楽にそう促す。

「じゃあ皆起きたところで、朝食にしましょうか。銀さん、私食器出しますね」

食器棚に手を掛けた妙に銀時は顔を向け、あぁ。と一言返して卵を手に取った。

「んじゃ、俺は卵焼きでも作るか」







すみません…。中途半端に終わってしまいました(汗)

晴れた空&澄んだ空気+大好きな人と朝食=ちょっとした幸せ だと思うのです(^^)

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