RKRN御題部屋入口

□何で赤くなってるんだ?
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「留三郎」

文次郎?何で俺の部屋にお前がいるんだよ。…って、おい、ちょっ……!近い近い近いって!うわっ!何やってんだ、バカ!!だあああああ脱ぐなってば!!あっ、どこ触って……。……っ、やめっ…!おい、もんじ、ろ……、も、出……っ!

「文次郎…っ!!」

チュンチュンと窓の外で小鳥が鳴いている。カーテンの向こうで輝いているだろう朝日が薄く照らす部屋の中、俺はベッドの上で目覚めた。当然のように文次郎はいない。

「………………」

俺は体を起こした。汗で張り付いたシャツが気持ち悪い。のろのろと掛け布団を剥ぎ、丸出しの下着の端を摘まみ上げ、中を覗き、

「……………………サイテー」

呟いた俺は再びベッドに倒れ伏した。



*****



「おはよ……うっわ」

前方に見慣れた後ろ姿を見付け声をかけた伊作は、振り向いたその顔を見て来た道に一歩後退った。
「留三郎、どうしたの?ひどい顔だよ」

心配そうに顔を覗きこむ伊作に、留三郎は疲弊しきった顔を歪め、溜め息を吐いた。

「実はな……」



*****



「なーんだ、そんなことか」

それが留三郎の話を聞き終えた伊作の第一声だった。その言葉に留三郎は目を剥いて食ってかかった。

「そんなこと?“そんなこと”だと!?」

伊作に掴みかからんばかりの勢いで詰め寄る留三郎をいなしつつ、伊作は、でもさあ、と話を次に進める。

「それって悩むような事?普通、すごくラッキーだって思うものじゃない?だって、好きな人が夢に出てきて、口で……」

「わあああああ!!!」

伊作の声を留三郎の叫び声が掻き消した。道行く人が二人に怪訝そうな目を向けるのを察した伊作は慌てて留三郎の口を塞いだ。その人々が遠ざかるのを確認し、留三郎を睨んだ。

「あんまり騒がないでくれるかなあ……。何がいけないって言うのさ。良い夢じゃないか」

「どこがだよ」

留三郎は口を尖らせた。

「そんなの、不潔だ」

「はあ?」

しかめっ面の留三郎を見る伊作はいよいよ呆れ果てた様子で声を上げる。

「何言ってんの?盛りの高校生なんだから、好きな人とのあれやこれやなんかを全く妄想しないわけじゃないでしょ?そこまで純情だとちょっと気持ち悪い」

「盛りって何だよ!」

海の水が引くようにさっと距離を取る伊作を今度は留三郎が睨み付ける。

「そりゃ、全然想像しないわけじゃねぇし、将来的にはまあ……いやいや、それはともかく」

話しながら赤くなったりにやけたり、それらを打ち消すように首をぶんぶんと振ったりと、留三郎は忙しい。

「なんかあいつに失礼だろ、そんなの」

そう言って留三郎はアスファルトの上を前へ前へ出す足の爪先に視線を落とした。伊作は心の中で、変なところで真面目なんだから、と思い、苦笑を浮かべた。留三郎にばれると、何笑ってんだ、と突っかかられそうだから、あくまでこっそりだ。

「よう」

二人の会話が切れたところに、タイミング良く背後から声をかけた人物がいた。
よく知った響きに留三郎は不自然な速さと動きで振り返った。

「も、文次郎……」

「あ、おはよう」

目を見開き硬直する留三郎の隣を歩く伊作が遅れて後ろを向き、自然に挨拶する。

「おう。……何だよ、留三郎。人の面見るなりいきなり固まりやがって」

文次郎は依然として動かない留三郎を睨み付けた。それでも何も言わない留三郎の態度を喧嘩を売っていると取り、文次郎は大きく歩を進め、留三郎のすぐ目の前まで近付いた。

「…………っ!」

文句の一つでもつけてやろうと考えていた文次郎だったが、その瞬間茹で蛸のように耳まで真っ赤に染め上げた留三郎を前に面を食らってしまい、咄嗟に言葉が出なかった。その隙に留三郎は体を元の進行方向に戻ったかと思うと、あっという間に走り去って見えなくなってしまった。
あまりに速い行動の展開に文次郎はただただ呆気に取られていた。

「あいつ、何で赤くなっていきなり逃げたんだ?俺、何かしたか?」

理解できない、というニュアンスで伊作に尋ねるが、伊作は、さあ、と曖昧に笑って答えを濁した。
(まったく留さんってば………。こんな様子じゃ当分進展しそうにないな)



*****



取り残された二人はそのまま二人で登校するのだが、その後、伊作は留三郎からその時の文次郎の様子などをしつこく問われ、溜め息を吐く事になるのであった。





























伊作はいつも大変
留三郎は隠れ変態



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