RKRN御題部屋入口

□焦がれる
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昼休みを利用しての本の整理を終え、図書室から一歩踏み出すと、室内が余程暗かったのか、外は存外に明るく感じられて、私は目を細めた。
ほら、頭上を見てみれば、広い空にまばゆく巨大な光が一つだけあるだろう。
他の何物も及びはしない光と熱量とを孕んだそれは、常に燦然と輝き、私達の遥か彼方上空に在り続ける。
その力はあまりにも強く、私達は畏怖を覚えるが、それと同情に、人間を含む全ての生物は、生きている限り、あの存在に憧れ、どうしようもなくこの身ならずこの心までを焦がされてしまうのだ。
あれは太陽というものだが、それらが当て嵌まる人物が私の傍にいる。
ばたばたと騒がしい足音が廊下を渡ってこちらに近付いて来るのを聞いていると、彼はすぐに私の前に現れた。

「おう!長次か!何だ、委員会か?」

「…まあ、そんなところだ。そっちは?」

「私?私は、そうだな…バレーのような鬼ごっこのようなかくれんぼのような遊びをしていたぞ!」

成る程、と私は心の中で納得した。
小平太の話す遊びの内容は想像に難くなく、黒いぼさぼさの髪に絡まった草や葉を見れば、彼の遊びに付き合わされた、おそらくは体育委員会の後輩達の、ぐったりと疲労しきった顔が目に浮かぶようだ。

「いやあ、楽しかったなぁ。猪とかなんか出たりして大変だったけど、面白かったから良しとするか!」

「猪はいくら何でも危ないだろう」

いくら注意をしたところで、小平太が聞きやしないなんて事は重々承知だ。現に、まさに今も私の忠告にはぞんざいに返事をして笑っている。
だが、一応言わなくてはこちらの気が済まないので、言わば通過儀礼のようなものだ。

私は、彼はあの太陽と似ていると思う。
いつでも溌剌としていて、好き放題に振る舞って、正直なところ、普段から薄暗い所にいる私には眩しいのだ。
だが、その眩しさに惹かれているのだろう。
強くて、大きくて、温かい小平太が私はとても大切で、好きなのだ。
どんなに焦がれても、小平太は私の想いに気が付きもしないのだろう。
だが、小平太はあの輝くばかりで動かない太陽とは決定的に違うところがある。

「そろそろ授業始まるんじゃないか?行こう、長次!」

遊びやら何やらの話の途中で突然そう言うと、小平太は私の手を掴んだ。
当然の事のように、ごく自然に。

「遅れたら長次が言い訳考えてくれよ!」

「遠慮する…」

この太陽みたいな少年は、日陰者の私をこうして引っ張ってくれる。
いつまでもこの調子で頼っていてはいけないと思うが、何分小平太の隣は心地の良いものだから。

触れ合った小平太の手は、春の陽のように暖かかった。





























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こへ長は神聖すぎて私浄化しそう



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