RKRN御題部屋入口

□慈悲と優しさ君のはどちら
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崩れかけた城壁に背を預けた私は、目の前で仁王立ちをしている尊奈門に言った。

「さあ、前に言っていた時が来たようだね。よろしく頼むよ、尊奈門」

それでも彼は動かない。





数日前の事だ。
そこら辺の地図やら何やらを広げ、私は確信していた。

「この戦だけどね、タソガレドキもいよいよ年貢の納め時というものらしい。どうしたってこの軍勢はひっくり返せっこない」

そこで、私は私の部下である尊奈門にこう言い付けておいた。

「でも、私も雇われた身だからね。最後まで見届けるつもりだ。それでね、君に頼みがあるんだよ。私が死にかけていたら、君に止めを刺してもらいたいんだ」

彼は、何故だ、と眉をしかめたので、私は理由を説明した。

「野垂れ死ぬのが嫌なだけさ。失血死だったり、爆弾に吹っ飛ばされたり。そんな風に、自分の命、あるいは死を自分で制御出来ずに死ぬのは避けたい。だから、私が手の施し様もない大怪我をしたら、君が私を殺してね」

私はいたって真剣だったのだけれど、尊奈門は私がふざけて言っていると思ったらしい。
はいはい、と流しながら、興味なさ気に、

「どうして私を指名するのですか?」

尋ねてきた。
だから、私は言ってやった。

「一番愛してるから」



そして、その瞬間を迎えた今、彼は躊躇っているようだ。
ほぼ壊滅状態にある自陣に投げ込まれた焙烙火矢の爆発から何とか逃れはしたものの、右足の膝から下が犠牲になってしまった。
血は滔々と流れ出し、それに比例して私の顔色は見る見るうちに青白く変色していく。
もう長くはないだろう。

「尊奈門、この前言っただろう」
「ですが…」

「この出血の量では助からない。万が一助かったとしても、忍として働かない身体で生き延びるのはごめんだ」

私に負けじと青い顔をしている尊奈門を見上げ、微笑み掛けた。

「お前の手で終わらせてほしいんだ」

その言葉に、ようやく覚悟を固めたのか、尊奈門は己の持つ刀の刃を鞘から引き抜いた。

「失礼、します」

ゆっくりと振り上げられた刀が、遥か上空の月を割る。
それを見ながら、私はぼんやりと思った。

(君が私を殺してくれるのは、)

(死にゆく哀れな上司の最期の命令故の慈悲か、)

(私という一人の人間への優しさか)

微かな逆光、私は彼に笑う。
そして、理解している。
彼は、後者だ。

(そんなに泣きながら刀を構える奴があるか)

涙を淡く煌めかせ、意を決して刀を振り下ろすお前は、きっとこれから私に捕われるのだろう。
そう思うと、嬉しくて、私は笑ってしまうのだ。



































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雑渡受け第二弾



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